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PER(株価が伸び悩む理由)

企業の2012年4-6月期決算が出揃うとともに、米国のQE3(金融緩和の第3弾)への期待が高まるに連れて、足元の株価がいくらか上向いてきた。
わが国の東証1部の株価指数TOPIXは、欧州債務危機の深刻化を受けて6月4日に付けた安値から、すでに10%上昇している(2012年8月23日現在)。同期間の米国のS&P500(11%上昇)、英国のFTSE100(10%上昇)と同じ程度の反発ではあるが、筆者と同じく日本株の上昇力に物足りなさを感じている方々は多いだろう。

4-6月期の決算発表後のTOPIXを構成する約1,700社の会社予想は、今期(2012年度)の純利益は前期比52%増。震災の影響を受けた前期に対し、復興の今期の日本企業は先進国の中で唯一の大幅増益が見込まれる。にもかかわらず、わが国の株価が伸び悩んでいるのはなぜか?

利益上昇へ期待が株価指標PER(株価収益率: Price Earnings Ratio)の低下で打ち消されているからだ。
PERは、今期の予想純利益に対する現在の株価の倍率と定義され、企業の稼ぐ収益力の何倍の株価水準が市場で形成されているかを表す。PERが高ければ高いほど、市場参加者が企業収益力を高く評価していることを意味する。ところが、今期になってPERが大きく切り下がっている(図表)。


TOPIXのPERは、前期末(2012年3月末)の21.7倍(=株価854円÷1株当たり予想純利益39.3円)に対し、足元の8月23日は12.8倍(=株価765円÷1株当たり予想純利益59.7円)と41%も低下している。この間に予想純利益は52%も上昇しているにもかかわらずだ。
結果、足元の株価(=1株当たり予想純利益×PER)は前期末よりも10%低い水準にとどまっている。一体なぜ、PERが切り下がったのか?

日本株のPERが今期になって急低下し過去最低水準を更新した理由は、投資マネーが株式から国債へ逃げる現象「リスク・オフ」だけでは説明できない。なぜなら、他の主要先進国(米・英・独・仏)は、以前から軒並み9-12倍台だからである。

そのPER水準への接近は、日本株にグローバル化が浸透してきたことの現れと解釈する。
東証1部の株式取引の約3分の2を海外勢が占める中、取引を通じての株価ならびにPERの形成は、海外投資家の価値判断に委ねられている。彼らは特に米国株(PER12倍台を中心に推移)を目安にしていると見受けられ、従来からの日本人投資家とは判断基準が異なる。

日本株のPER切り下げへの圧力はあるが、その12倍台の水準がこのまま直ちに定着するとは考えづらい。4-6月期の企業業績は前年同期に対し利益横ばいにとどまったため、市場参加者は今期(2012年度)の力強い増益見込みをまだ十分に確信できていない。そのことも、株価の上値が重くなる要因だからである。

7月の米国での自動車販売台数は、米国勢が苦戦する中(GM: 前年同月比▲6%、フォード: 同▲4%)、日本勢は大きく伸長している(トヨタ: 同+26%、日産: 同+16%)。昨年の東日本大震災の影響での在庫不足が解消したからだ。
9-12月期は、前年同期のタイ洪水で現地生産が滞った反動が、今期の業績伸長に貢献する。自動車ならびにその部品・素材のセクターは、テレビの売価下落で苦戦する電機セクターをカバーし、日本企業のけん引役となろう。

加えて、前期の法人税率の引き下げに伴う税効果要因(年明けに繰延税金資産の取り崩しによる下方修正が続出した)の反動も鑑み、TOPIXのPERは15.0倍程度への戻り(株価は現在よりも17%程度の上昇)を予想する。
今期の日本企業の力強い利益伸長への確信が強まるにつれて、市場参加者はわが国の復興への底力を評価してゆくだろう。

2012年8月24日