2013年11月18日(月)
日本企業の2014/3期2Q累計(2013年4-9月)の決算がおおむね出そろった。東証1部上場企業(金融業を除く)の営業利益は、前年同期に対し34%増(*)。為替の円安の追い風を受けて、実は先進国の中で最も力強い数字である。
企業業績は、海外との貿易や在外子会社の事業での外貨建ての額を円へ換算のうえ、国内の円建ての額と合算して決まる。外貨額の円換算に当たり、円安は業績の押し上げ効果を発揮する。
2Q累計のドル/円(円相場)の平均は99円。アベノミクスでの大規模な量的緩和とインフレ推進の政策により、前年同期(2012年4-9月:平均79円)から20円も円安進行した。
その間の利益の伸びのうち、どの程度の割合が為替要因によるものだろうか?
為替変動の営業利益への影響を公表している輸出企業の中から、典型的なケースをいくつか紹介しよう。
日本株の時価総額に占める比率の高い業界(自動車と電機)を主体に、主要企業全体の縮図をイメージして選んだ、8社の分析結果は次のとおり(図表)。
例えば、トヨタ自動車の2Q累計の営業利益は、前年同期に対し5,617億円増(=12,555-6,938)と大きく伸長。日本・タイ・インド市場の伸び悩みを受けて販売台数は前年同期比1.1%減少したが、為替変動の影響が5,400億円も利益水準を押し上げている。
結果、同社の利益伸長に占める為替要因の割合は96%(=5,400/5,617)。大幅増益となった理由の大部分は、大幅な円安進行による効果で説明できてしまう。
同社に限らず全般的に、今期の円・外貨それぞれの売上高は前年同期と大差ない。販売の数量も現地通貨建ての単価も伸び悩んでいるため、日本企業の増益要因は為替以外にあり得ない。
そのことを数字でもって実感してみよう!
営業利益の伸びのうち円安効果の割合は、会社の売上に占める外貨建ての比率などに応じて、29%(パナソニック)から444%(日立製作所)と幅広い。そこで上位2社と下位2社を除き、中位4社(トヨタ自動車、東芝、富士フイルムHD、ヤマハ)の平均をとると101%。
やはり、2014/3期2Q累計の日本企業の大幅増益は、そのほぼ全体が為替要因によるものと推察される。
わが国の3Q以降(2013年10月-2014年3月)の企業業績は、ドル/円の平均がその前年同期(2012年10月-2013年3月:平均87円)をどれだけ上回るかで決まりそうだ。
足元の為替市場の実勢は100円であることから、2Q累計よりも増益率は縮小してゆくが、先進国で唯一の2ケタ増益は今期いっぱい続くと想定される。
とは言え、販売数量が伸び悩むとともに円安効果に過度に依存している状態のままでは、決して評価できる決算内容ではない。
大きな為替リスク(円高再燃時にアベノミクス以前の利益水準へと逆戻りする危険)を抱えているため、大半の日本企業の販売数量が上向くまでは予断を許さない状況にある。
今のところ、日本発の投資マネーが米国債を必死に買い支えることで、政策目的と見受けられるドル高・円安が演出されている。
しかし、不自然な状態はいつまでも続くものではない。やがて支えきれなくなった途端にバブル崩壊するのは、時間の問題であろう。
株式会社アナリスト工房
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*)2014/3期2Q累計の営業増益率は、11月15日までの決算発表分を対象とした、みずほ証券リサーチ&コンサルティング社による集計値(11月18日公表)に基づく。