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仮想通貨暴落は理論値ゼロへの警告

永遠のゼロに終止符を打つためには、通貨価値の裏付けが緊急課題

2018年11月27日(火)アナリスト工房

バブル崩壊がはじまってから真っ先に市場で暴落する可能性が高いのは、市場価格が理論価格(適正な価値)をはるかに上回る超割高な金融資産です。

2008年のリーマンショックのとき市場大暴落の口火を切ったのは、アメリカの住宅ローン債務者の延滞・破産が深刻化したことに伴い、理論的に二束三文の不良資産と化したMBS(住宅ローン債券)。米MBS市場からはじまった暴落は、やがて為替市場の米ドルと主要国の株式市場へ広がりました。

リーマンショックから10年後のいま懸念が強まる次の世界金融危機は、暴落の真っただなかにある理論的に無価値なビットコインなどの仮想通貨(ネット専用通貨)が火付け役かもしれません。なぜなら、金融資産の価格評価に用いるDCF(割引キャシュフロー法)に基づくと、利息・配当などのキャッシュフロー収益を生まない仮想通貨は理論価格がゼロですからね。

▼仮想通貨とは、市場価格がゼロへ引っ張られるトンデモ有価証券

数ある仮想通貨のなかで時価総額の過半を占めるビットコインの市場は、2017年12月に1ビットコインあたり19,891ドルの史上最高値をつけた直後からバブル崩壊がはじまり価格転落が続いており、11カ月後の今月には一時なんと82%安の3,663ドルまで年初来安値を更新しました(11月25日のBitfinex取引所)。他の主要仮想通貨の市場も軒並み低迷し続けています。

仮想通貨の市況がなかなか下げ止まらない最大の原因は、理論価格ゼロに対する市場価格の割高度(=市場価格/0-1)が、いつまで経っても100%(1)をはるかに超え無限大であること。理論的に無価値な仮想通貨の市場価格は、たとえ備忘価格1ドルまで下落した場合でさえ、限りなく割高なのです。

国が発行しする法定通貨(円、ドルなど)は、法により受取りを拒めない"強制通用力”があることから受取った者が同額の支払いに幅広く使えるため、通貨価値が比較的安定しています。
一方、ビットコインをはじめ理論価格がゼロの仮想通貨は、強制通用力がなく使える場面が限られているため、ネット専用の"こども銀行券”にすぎない。しかも、その投資家ユーザーたちが市場で決めた価格は、いつも理論価格ゼロに対し超割高な水準なので、バブル堅調なときでなければ維持できないのです。

アメリカの証券当局によるICO(企業による仮想通貨の新規売出し)の取り締まり強化も、仮想通貨の市況低迷の大きな原因となっています。ICOとは、企業が仮想通貨を発行することにより投資家から資金を募る財務政策です。

ICOに有価証券発行と同様の厳しい規制(当局への登録義務)を課すアメリカでは、2018年1月に最大規模のICO案件(仮想通貨銀行アライズバンクの6億ドル)が、SEC(米証券取引委員会)へ登録せずに投資家から資金を集めたため差し止められました。

11月には、未登録のままICOに踏み切った米2社(モバイル銀行エアフォックス社の1,500万ドル、大麻販売パラゴン社の1,200万ドル)へ差し止め命令のうえ25万ドルずつ罰金を課したSECは、ICOを有価証券発行とみなし厳しく取り締まる姿勢を改めて強調しました(11月16日公表)。

ICOで発行される企業独自の仮想通貨は"トークン(代用貨幣)”といいます。このトークンは、ビットコインなど他の大半の仮想通貨と同様に利息・配当などのキャッシュフロー収益を生まないため、理論価格ゼロのネットこども銀行券にすぎない。
にもかかわらず、その保有者の財産権を証明する有価証券として祭り上げられたトークンは、ICOを危ぶむ米証券当局の執拗な取り締まり対象です。

▼通貨史のなかではがされた、実物資産での価値裏付けを取り戻そう!

法的に有価証券とみなされるトークンは、理論価格ゼロに強く引き寄せられ暴落している他の数多くの仮想通貨と同様に、通貨価値を付ける必要に迫られています。法定通貨とは異なり強制通用力を付与できずしかも利息・配当のないトークンなどの仮想通貨は、貴金属などの実物資産を用いて価値を裏付けることが可能です。

仮想通貨の元祖トークンが発祥した古代メソポタミア(現イラク)では、トークンの通貨価値が貴金属や穀物で裏付けられていました。銀などの貨幣と並ぶ代用貨幣として活用されていた当時の粘土製のトークンは、王室が然るべき量の穀物や銀と交換できる旨を明記することにより、価値がしっかり守られていたのです(下記)。

「古代メソポタミアでは、5,000年も前から粘土製のトークン(代用貨幣)を使って、大麦などの農産物、羊毛、銀などの金属の取引記録を残してきた。銀をリング状にしたり、塊にしたり、板状にのしたりしたものも、穀物と並んで貨幣として使われていたが、粘土製のトークンもそれなりに重要で、あるいは銀以上の価値さえあった」

「ユーフラテス河畔のシッパル(現イラクのアブハッバ)で出土したものは、アンミ・ディタナ王(紀元前1683−紀元前1647)の時代に作られたもので、収穫したばかりのしかるべき量の大麦と交換できる、と記されている。前王の後継者アンミ・サドゥカが作ったトークンには、"これを所持する者は、旅の終わりに一定量の銀が与えられる"と記されている」
ファーガソン(仙名紀 訳)『マネーの進化史』早川書房(2015)

ところが、21世紀のICOで発行される仮想通貨トークンは、実物資産での価値の裏付けがない。しかもその大半は、利息・配当などのキャッシュフロー収入を生まないため、割引キャッシュフローに基づく理論価格がゼロ。4千年の時の流れのなかで、通貨本来の基本的仕組みが発行体有利・ユーザー不利に歪められ、トークンなど仮想通貨の理論的価値はすっかり流れ落ちてしまったのです。

失われた仮想通貨本来の理論的価値を取り戻さない限り、理論値ゼロへ強く引っ張られる仮想通貨市場の大暴落およびそれに続くと想定される次の世界金融危機を止めるのは難しい。

アナリスト工房 2018年11月27日(火)記事