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FRBのドル資金回収と20年債買い支え

基軸通貨の価値をひとまず保ちながら、米緩和が縮小に転じた舞台裏

2020年6月24日(水)アナリスト工房

NY市場の金融機関勢が資金調達難に陥った昨秋からFRB(米連邦中銀)は、QE4(量的緩和の第4弾)とレポオペ(米国債などを担保に金融機関への資金貸付)を開始し、市場へ大量のドル資金を供給中。QEとレポオペは、中央銀行が取得する米国債などと引き換えにお金を刷って金融機関経由で市場へバラまくことから、俗称”プリントマネー”の緩和策に分類される。

FRBがバランスシートに資産計上するときの勘定名は、QEが買い取った各金融商品の名称(米国債など)に対し、レポオペが”買い戻し条件付き契約(Repurchase agreements)”。なお、プリントされたマネーは負債計上される。

<FRBの資産構成(Jun 17th 2020)>
     QEの対象資産:6兆2827億ドル
     ・米国債:4兆1693億ドル、
     ・MBS(モーゲージ証券):1兆9187億ドル
     ・他のQE対象資産(ローン、社債、地方債など):1947億ドル
    レポオペ:791億ドル
    通貨スワップ:3525億ドル
    その他の資産:3804億ドル
    資産合計:7兆0947億ドル

新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)が恐慌を招いた今年3月には、QE4が実施予定額を必要量とする”無制限緩和”と化した。また、レポオペでのドル資金供給が、”通貨スワップ協定(中銀間で自国通貨と交換に相手国通貨を融通してもらう取り決め)”を活用することにより、海外でも実施できるようになった。
結果、QE4と国内外のレポオペ(通貨スワップを含む)による資金供給残高は、一時期には2週間でなんと1兆0600億ドルも伸長(3月19日〜4月1日)。そのとき、今回のFRB緩和が最盛期だった。


直後、米国内の金融機関勢の資金調達難の改善とともに、レポオペ取引が減少開始。6月初旬からは、海外レポオペのための通貨スワップ取引も減少傾向が鮮明となった。
並行してQE4は、ロックダウン(都市封鎖)の解除と経済再開への動きが広まるにつれて、FRBが金融商品を買い取りでの資金供給ペースを毎週スローダウン(下記)。基軸通貨の番人は、米ドルの通貨価値を損なうプリントマネーを伴う資金供給を段階的にたっぷり絞り込んだ

<QE4の実施予告額の推移(20年4月〜6月第2週)>
・4月第1週:900億ドル(=米国債600+MBS300)/日
・4月第2週:750億ドル(=米国債500+MBS250)/日
・4月第3週:450億ドル(=米国債300+MBS150)/日
       ・・・中略・・・
・6月第1週:90億ドル(=米国債45+MBS45)/日
・6月第2週:85億ドル(=米国債40+MBS45)/日

そのうえ、6月10日のFOMC(アメリカの金融政策決定会合)でFRBは、QE4の規模をようやく必要量から月1200億ドル(=米国債800+MBS400)へ改定した。すなわち、1日あたり60億ドル(=米国債40+MBS20)の資金供給ペースにまで、主力の量的緩和がスローダウン。このとき、基軸通貨の番人FRBはテーパリング(量的緩和縮小)に踏み切ったと解釈できる。

翌週6月17日、QE4と国内外のレポオペによる資金供給残高は、1週間前に対し799億ドル減少。FRB資産合計は同742億ドル減で、2009年以来最大の落ち込みとなった。とくに海外レポオペための通貨スワップ(1週間前に対し920億ドル減)、国内のレポオペ(同882億ドル減)だ。
世界的なドル資金調達難がひとまず解消したことを口実に、FRBは米国内市場だけでなく日銀(1週間前に対し92億ドル減)、欧州中銀(同754億ドル減)からもドル資金を回収し始めた。

米ドルの資金需要がすっかり減少したなかで、もしもFRBが3月下旬並みのハイペースな資金供給をダラダラと継続した場合には、需給悪化によりドル暴落を招く危険が高い。そこで基軸通貨の番人は、レポオペと通貨スワップに大ナタを振るいながら、QE4の規模を必要最小限に抑え資金供給を絞り込むことにより、ドルの通貨価値をひとまず巧みに下支えしている。

▼20年債→50年債→100年債。米、国家デフォルトへの準備

QE4の主力資産である米国債の価格下支えも、今のところバッチリだ。
新型コロナ恐慌対策に伴い膨らんだ米連邦政府債務(6月22日時点の債務残高26.2兆ドルはなんと年初来3.0兆ドル増)をまかなうために、5月から米財務省は米国債20年物を34年ぶりに発行再開。注目が集まったこの20年債の入札に先立ち、FRBは20年後に満期を迎える発行済みの米国債(2040年2〜11月満期)を許される上限枠70%までたっぷり買い取った

結果、これまでの20年債入札(5月20日、6月17日)は、米国債発行激増の悪影響は被らず、高価格・低利回りで無事発行・消化できている。
7月以降も米国債入札が順調な場合には、ホワイトハウスで検討中の初の50年債発行への道が切り開かれる。そして、ムニューシン米財務長官は19年9月、「50年債が上手くいけば、100年債を発行する可能性がある」(NYT紙のイベント)と超長期債発行への意欲を表明済み。

市場のニーズが薄い米国債100年物が発行されるときは、米大統領の国家デフォルト宣言とともに、投資家がすでに保有中の米国債と新たな超長期債との交換を強制される「リファイナンス(借り換え)」を通して、実質的な借金踏み倒し(清算)に至る可能性が高い。

「FRBよ、賢くなれ!低金利諸国に挑む競争力をつけるために、はるかに高水準の米ドル金利を利下げすべきだ。そうしてくれたら、アメリカは債務のペイオフ(清算)とリファイナンス(借り換え)に注力できる」
トランプ米大統領(Jan 28th 2020)Twitter

そもそも、半年足らずで政府債務残高が13%も激増中のアメリカは、政府債務をまかなう米国債とその通貨ドルの価値をいつまでも保ち続けることは難しい。米財務省の国債発行とFRBの金融政策は、ある日突然ハシゴを外す危険がたっぷりなので、引き続きご注意下さい。

アナリスト工房 2020年6月24日(水)記事