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為替リスク大国とその行方は?

2013年8月22日(木)

世界の主要国の中でいちばん大きな為替リスクを抱えている国はどこでしょう?

残念ながら、無責任な"プリントマネー(*)"を続けている米国ではありません。基軸通貨を発行する米国は、その特権を活かし世界の国々へ為替リスクを放出しているため、自ら大きなリスクを背負う必要がないからです。
ならば、米国発の為替リスクの最大の引き受け国はどこでしょうか?

世界の貿易額に占めるトップ3は、米国を除くと、輸出・輸入ともに上からユーロ圏、中国、日本の順です(2012年)。為替リスクにさらされている額の大きなこれらの3カ国・地域を候補とし、その中から答えを求めてみましょう。
それぞれの通貨の対ドルの為替レート(順にユーロ/ドル、ドル/人民元、ドル/円)の値動きを眺めてみると、世界でいちばん為替リスクの大きな国は一目瞭然です(図表)。

"リーマンショック"の起こった2008年9月から先月(2013年7月)までの約5年間を、急激な円安局面が始まる前の「アベノミクス前(~2012年10月)」、その後の「アベノミクス以降(2012年11月~)」の2つの期間に分けて、それぞれの為替レートの変化率にご注目下さい。


円相場(ドル/円)は、アベノミクス前が36%の急激な円高進行に対し、その後は18%も円安方向へ反落しています。2つの期間のレート変化ともに突出して激しいことから、円を母国通貨とするわが国は基軸通貨ドルの為替リスクの最大の引き受け国といえましょう。

また、他の通貨の対円の為替レートも円相場に比例することから(例えばユーロ/円は円相場とユーロ/ドルとの積)、日本は対ドルに限らずいちばん大きな為替リスクを抱えている国と見受けられます。
そもそも、円相場が上下に激しく変化し、わが国の為替リスクが大きいのはなぜでしょう?

アベノミクス前からの根強い円高要因を放置したまま、その後に円安政策を強く押し進めているため、円高にも円安にも大きく振れやすいからです。

最大の円高要因は、米国の債務問題です。その政府債務残高は、今年5月に現在の法定上限16.7兆ドルに達しています。今のところ資金繰りの工夫で何とかしのいでいますが、10月以降はそれも限界となる見込みです。
議会が上限引き上げに強硬に反対しているため、このままでは2011年夏と同様にドル急落を伴うデフォルト騒動が再発する危険があります。

強力な円高要因がまったく未解決のまま、わが国では将来のインフレへの期待を煽り、半ば強引に円安方向へ誘導されてきました。
気まぐれな市場がその時々に円安材料を重視するかしないかに応じて、円相場が乱高下している次第です。

今年10月以降、再び米国の債務上限が引き上げられデフォルト回避できたとしても、そのことが将来の米国債増発とさらなるプリントマネーに結びつくため、1ドルあたりの価値低下を通じてドル安・円高への要因となります。
為替が円高方向へ急反転した場合、わが国は為替リスク大国の汚名をしばらく返上できなくなりそうです。

株式会社アナリスト工房

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*)プリントマネーは、国が経済力に見合わない大量のお金を発行することを意味します。語源は、グリーンスパン前FRB議長の米国債格下げ(2011年8月)に関する次の発言です。
「米国は借金を完済できるさ。お金を刷ってそれで返せばいいからね。」