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米国の債務問題(デフォルトの危険)

2014年2月25日(火)

「お前はもう死んでいる(You're already dead.)」
-武論尊・原哲夫 著『北斗の拳』集英社文庫

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2月15日、米国の政府債務上限(17.2兆ドル)を来年3月15日まで必要なだけ引き上げてゆく法案が、正式に成立した。基軸通貨国のデフォルトはひとまず回避されたが、今回もその場しのぎの先送りに過ぎず、根底にある債務問題はむしろ深刻化している。
オバマ政権下での最初のデフォルト騒動時(2011年8月の債務上限額は14.3兆ドル)から今回の上限引き上げ前までのわずか2年半で、米国の債務残高はなんと20%も急増しているからだ。

まず、その数字が示す債務膨張の速度は、世界一の借金大国ニッポン(直近2年半の政府債務残高は8%増:*)の2.5倍の超ハイペースである。このように、米国の財政規律はすでに完全に失われているといえよう。

あるいは、日米間での債務膨張速度の大きな格差が不可解なことから、米国が実際にはより多額の債務を抱えている可能性も考えられる。
例えば、2年半の間に債務が2.9兆ドル(=17.2-14.3:**)増加したことは事実とみなしたうえで、実は「最も深刻と称される日本と同じペースで債務膨張している」と仮定してみよう。
その場合、今般の上限引き上げ直前における本当の債務残高は43.0兆ドル(=17.2×2.5)。GDPに対するその規模は2.6倍であることから、米国はわが国(日本の政府債務残高はGDPの2.4倍)を抜き世界一の借金大国に浮上する。

国家のデフォルトは、対外債務を予定どおりに返済できなかった時に生じる。政府債務をまかなう手段として発行される日本国債は海外投資家の保有割合が約1割に対し、米国債のそれは約5割もある。
よって、はるかに多額の対外債務を抱える米国は、いっそう重大な事態に陥っているといえよう。

今回の債務上限引き上げ後においても、米国の政府債務残高は早くもさらに0.2兆ドルも増えている(2月21日時点で17.4兆ドル。上限引き上げからわずか1週間で0.9%増)。
近くオバマケア(国民皆保険の制度)が予定どおり予算をたっぷり獲得しその運営が本格化した暁には、世界一の超高額医療費を国民に代わり国家が背負うため、債務膨張のペースはさらに加速してゆく。

一方でFRB(米国の中央銀行)は、QE3(量的緩和の第3弾:2012年9月−)を縮小中。昨年12月まで月々850億ドルの米国債などの買取りにより実施してきた資金供給を、すでに今年の1月は750億ドル、2月は650億ドルに減額しており、年内に終わらせる方針でいる。
すなわち米国債は、その最大の買い手(現在はFRB)を間もなく失う。

足元は新興国から引き上げた投資マネーが米国債へ逃避しており、また3月以降は日銀の量的緩和の拡大が想定される。しかし、膨らみ続ける米国債を買い支えてゆくためには、これらの経済規模が限定的な国々からのマネーを巧みにたぐり寄せて活用しても、焼け石に水に過ぎない。

「お前はもう死んでいる」との宣告を市場から受け(あるいは居直って自ら死亡宣言し)、基軸通貨国の債務とドルが切り下がるのは、決して遠くない将来であろう。

株式会社アナリスト工房

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*)日本の政府債務(国債と借入金)の残高は、2011年6月が944兆円、2013年12月が1,018兆円。2年半で8%増加している。
**)米国の政府債務残高は、米財務省の日報(Daily Treasury Statement)の数字を使用。