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CoCo債とは?(ヤバい仕組みとリスク)

2014年10月10日(金)

複雑な金融商品への投資は、その仕組みをきちんと理解するとともにリスクを覚悟のうえで、踏み切るかどうかを判断することが大切です。
一方、仕組みがよく分からないまま高利回りにつられた投資家が殺到している商品は、次々と出没しています。
うち大半は、利回りよりもリスクがはるかに高いにもかかわらず、海外投資に免疫のないわが国の投資家に人気を集めているのが現状です。

今回は、そんな危うい金融商品のなかから"CoCo債(偶発転換社債:Contingent Convertible Bond)"を取り上げ、その仕組みとリスクを説明します。

海外投信にも組み込まれ話題となっているCoCo債は、欧州の銀行が資本増強のために発行する債券です。年初来の平均利回りが5−6%で推移しており、超低金利のわが国の投資家にとっては高利回りといえます。
ただし、発行体の銀行の自己資本比率が一定以下になったとたん、強制的に株式に転換(あるいは元本が大幅カット)されてしまう点が、CoCo債の最も大きな特徴です。

【例】イタリア大手のM銀行が発行した満期に定めのないユーロ建てCoCo債は、足元の利回りが6.0%。ただし、同行の自己資本比率が8%以下となった場合には、その債券がM銀行株へ強制転換される。

CoCo債は、債券でありながら株式としての性質ももつ"ハイブリッド証券"に分類されますハイブリッド証券のなかで古くからよく知られているのは、株価上昇時に株式へ転換される"転換社債"です。
メジャーな転換社債と新たに登場したCoCo債の違いは何でしょうか?

まず、転換社債は株式へ転換する権利が投資家にあるため、投資家は株価上昇時に転換社債との交換で株式を取得します。
このとき投資家の取得する株式は転換社債よりも価値が高いことから、転換社債には投資家にとって有利な権利が内包されているのです。

一方でCoCo債は、発行体の銀行の自己資本比率が一定以下となったとき、強制的に株式へ振り替わります。そのような緊急事態が生じたときは銀行の株価が急落しているため、投資家に交付されるその株式の価値は二束三文です。
よって、CoCo債に内包されているのは、投資家にとって不利な義務。すなわち、その取引相手の発行体に有利な権利なのです。
いったいなぜCoCo債は、発行体の銀行にとって一方的に都合の良い仕組みとなっているのでしょうか?

欧州の銀行は、新たな厳しい自己資本規制のもと資本を積み増すことを目的に、CoCo債を発行しています。CoCo債での調達が資本増強となるためには、緊急事態時におけるその株式への転換が規制の要件だからです。

前回の企業分析のコーナーでは、2013年から実施されている"バーゼル3基準"の自己資本規制について、銀行のなかで国内業務に特化した"国内基準行"を題材に紹介しました(バーゼル3の自己資本比率とは?)。
一方、上記M銀行のように国際的に業務展開している"国際基準行"は、8%以上の自己資本比率を保つことが義務づけられています。

その分子(自己資本)にハイブリッド証券での調達を算入するためには、発行体の自己資本比率が一定以下となったとき、その株式への強制転換(あるいは元本の削減)の条項を設けることが必須です。
このように銀行の自己資本規制対策として発行されるCoCo債は、発行体の銀行がそれを資本に組み入れる厳しい要件を満たすために、投資家が資本の毀損とともに株式価値の急落する大きなリスクを負う仕組みをもつのです。

もしもリスクに見合ったリターンが追求できる投資でしたら異論ありませんが、強制転換条項に伴う危険を考慮すると、平均利回りが.数%程度ではまったく足りません。少なくとも8−10%の利回り水準が適正と考えます。

また、欧州にデフレ不況への危機が迫るなか今月からECB(欧州中央銀行)が禁断の"量的緩和(QE)"に踏み切った情勢を踏まえ、"情報の非対称性(発行体と投資家の情報格差)"にもご注意ください。
金融危機が生じる可能性のある局面では、金融システムを担う銀行の財務体質に関する真の情報は、これまで日・米・欧いずれも適切に開示されていません。IR(投資家への情報開示)よりも、金融システムの安定と信用秩序の維持がはるかに優先されるからです。

以上によりCoCo債とは、投資家に株主との共倒れの危険を強いる仕組みをもつとともに発行体の財政実態が正しく開示されない懸念から、リスクが特に高い金融商品です。
しかもその利回りが不十分なため、投資家は背負う危険に対する正当な見返りもありません。"ハイリスク・ローリターン(あるいはマイナスリターン)"のとんでもない商品といえましょう。

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