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金の急落と債券高・株高の誤り

2013年4月23日

「市場はいつも間違っているものだ」
-ヘッジファンドの創世記を築いたジョージ・ソロス氏の名言-

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かつて金(ゴールド)は、政府の発行する貨幣そのもの(金貨)、あるいは金と交換可能な"兌換貨幣"の価値を裏付ける役割を担っていた。金貨も兌換貨幣も見かけなくなった今でも、コモディティ(商品)市場のドル建ての金相場は、基軸通貨ドルの価値を測るモノサシとしての役割を担っている。
近頃、世の中の価値基準となるこのモノサシの目盛を歪めようとする動きが生じているようだ。

今月(2013年4月)のCOMEX(NY商品取引所)の金の期近物は、12日(金)と15日(月)のわずか2営業日で13%も急落。1980年以降の最大の下落率を記録してからも、反発力の鈍い展開が続いている(4月22日現在)。いったい何が起こっているのか?

金と同じドル建ての金融商品の動向をみれば一目瞭然だ。投資マネーが米国債と米国株へ向かっている(図表)。
金市場のなかでもマネーの流出元は、国々の中央銀行の保有する地金でなく、ヘッジファンドの投資するETF(上場投資信託)など金価格と連動する証券が中心。その一番の行き先は、利回りが急低下(価格が急上昇)している米国債である。


しかしその発行国は、1月末に可決した「暫定引き上げ法」により政府債務の上限を5月中旬までは上積みできるが、以降のデフォルトの危機は全く解決していない。
基軸通貨国の国債への信頼が揺らぐなか、金は本来ならば有力な逃避先として価格堅調であって然るべきはずだ。よって、今月の金相場の急落は不自然な現象といえよう。

金市場から流出した投資マネーのもう1つの主な行き先は、今月も最高値を更新している米国株である。

しかし、今年になって米国企業の収益力が伸び悩んでいる。S&P500構成企業の2013年1-3月期の純利益は、前年同期比わずか1.5%の増益予想(2013年3月のトムソン・ロイター調査に基づく)に過ぎない。しかも、先週から本格化している決算発表では、純利益の実績が予想を下回る企業が目立つ。
3月から実施中の強制的歳出削減が今年のGDPを0.6%以上圧迫する懸念のなか、足元も米国株が高値圏で推移している現状は極めて不可解である。

以上、金からの投資マネーを振り向けることにより、まるで米国債も米国株も必死に買い支えられているかのようだ。
ファンダメンタルとは正反対に動く市場の間違いを押し通してゆくのは、いくら何でも無理がある。支えきれなくなったとたんにバブル崩壊するのは、時間の問題と考える。

株式会社アナリスト工房