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米中GDPお化粧バトル

目標どおりに厚塗りする中国、塗りすぎて素顔を失った米国

2015年8月10日(月)アナリスト工房

海外投資では、投資対象国の経済情勢をつかむことが大切です。経済情勢をみる指標のなかでいちばん重要なのは、国内で産み出されたモノとサービスの付加価値合計を集計したGDP(国内総生産)です。
GDPの水準は国の経済規模、その伸びから物価上昇を控除した実質GDP成長率(=名目GDP成長率-GDPデフレータ)は経済成長力を表します。
いま、経済規模No.1、No.2の国々(それぞれ米国、中国)は、GDP統計の信頼性が疑問視されています

1.成長目標にとらわれた中国は、その場しのぎの厚化粧

まず、中国公表の今年これまでの実質GDPは、1−3月、4−6月ともに前年同期に対し+7.0%。3月に李克強首相が示した年間成長目標とズバリ同水準です。
ところが物価上昇を表すGDPデフレータは、1−3月が前年同期比▲1.1%(1.1%のデフレ)、4−6月が同0.1%(0.1%のインフレ)。一方、CPI(消費者物価指数の前年同月比)は、1−3月の平均が同1.2%、4−6月の平均が同1.4%でした。

GDP統計のデフレータと物価統計のCPIは、調査対象の品目が異なります。
とはいえ1−3月は、一方がデフレで他方がインフレでかい離が顕著ですね。経済が伸び悩むなか何とか成長目標をクリアするよう、デフレータの符号を実態とは逆に加工した統計結果と見受けられます。
そのような大きな無理がみてとれる結果には、信頼性がありません。

続く4−6月のデフレータは、とりあえずデフレ状態を解消させ、ややインフレとなっています。
ところがそのことにより、名目成長率は景気が上向いていないのに跳ね上がってしまいました(1−3月:前年同期比+5.8%→4−6月:同+7.1%)。実質7.0%成長の目標にこだわりすぎて、まさに「頭隠して尻隠さず」ですね。

中国の本当の実質GDP成長率は、1−3月の約6%の名目成長率と約1%のCPIに基づき、5%程度と推測することができます
10月公表予定の7−9月のGDP統計では、成長目標へのこだわりはキッパリ捨て、頭も尻もきちんと露わにしていただきたい。


2.利上げを急ぐ米国は、超厚化粧とつじつま合わせの時間旅行

次は、2012年以降の実質GDP成長率を大幅修正した米国(7月30日に米商務省公表)です。
まず2012年7−9月(年率換算で前期比+2.5%→同+0.5%)、2013年通算(前年比+2.2%→同+1.5%)、2014年7−9月(年率換算で前期比+5.0%→同+4.3%)は大きく引き下げています。

結果、GDPの水準でみた昨2014年の米国経済の規模は、修正前に対し実質0.8%も低いレベルと化しました。ニュース報道で繰り返し強調されてきた「米国経済の力強さ」とは、なりふり構わない超厚塗りのメイクの力といえましょう。

一方、今年1−3月の実質成長率(年率換算で前期比▲0.2%→同+0.6%)は、大きくプラスへ上方修正しています。そのうえで同日(7月30日)、4−6月の速報値(同+2.3%)をより高い成長率でもって公表しました。

以上、昨年まで3年間の成長率を大幅に削りその一部を今年へ配分したため、米国の年明け以降の成長性は上向き基調となっています。これで、来たるFRB(米国中銀)の利上げへの環境は整ったといえましょう。
国の経済情勢を踏まえた金融政策でなく、まるで金融政策に踏み切るための経済情勢づくりとは、本末転倒もはなはだしいですね。

なお、米商務省のGDP統計の修正は、今般がまだ第1段階にすぎません。その作業はいくつもの段階に分けて長期にわたり続きます次の段階の結果公表は来年晩春の見込みです。とにかく将来もさらなる大幅修正が想定されます。

修正後のGDPが最終確定するまでは、米国の経済情勢を最重要指標でもって把握できません。上記中国のGDPのメイクとは違って、その素顔を推測することも困難です。米国債・米ドル・米国株への投資は、しばらく見合わせましょう!

株式会社アナリスト工房

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【参考文献】
・英エコノミスト誌 2015年7月18日の記事『中国の経済データ ちゃっかり目標どおり』.
・ウォール・ストリート・ジャーナル日本版2015年7月31日の記事『米景気拡大、GDP改定で第2次大戦後最悪の状況がさらに悪化』by エリック・モーラス.