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トランプの政府機関閉鎖は天敵追討

抵抗勢力の資金源が断たれ、深刻な双子の赤字垂れ流しは止血へ

2019年1月22日(火)アナリスト工房

自国第1主義のトランプ政権の抵抗勢力は、経済分野では貿易黒字国からの対米投資マネーで潤い続けたい金融筋の一部、軍事分野では米軍が展開する世界各地の軍事利権を失いたくない軍産複合体などのグローバリストです。金融筋や軍産複合体などから献金を受けて彼らの意向のままに動く米民主党議員などの政治家も、反トランプ抵抗勢力に含まれます。
メキシコとの国境沿いに建設中の壁の予算をめぐり、米政権と抵抗勢力との戦いがついにクライマックスに突入しました。

国境警備予算での壁の議会承認が得られないために招いた今回の米政府機関閉鎖は、1990年代のクリントン政権のときに記録した最長期間(95年12月から翌月までの21日間)をすでに大幅に更新済み。
2018年12月21日までの壁予算を認めてきた民主党が以後の予算化を強く拒む一方、トランプ政権は壁建設のためには非常事態宣言も辞さない強硬姿勢。閉鎖による政権と議会との間のこう着はまだまだ続きそうです。

民主党が南側国境の壁の予算をかたくなに拒むのはなぜでしょうか?
そもそも、中南米からの米国移住を目指す集団を阻むために米軍が国境防衛のための壁をつくりはじめた18年11月からは、それまで国境警備の予算でまかなっていた壁は、19年9月まで確保済みの豊富な軍事予算も新たに活用できるようになりました。それでもなお、トランプ氏が新たな議会合意を要する国境警備予算での壁建設にこだわるのはなぜ?

一方でトランプ政権の外交は、経済(とくに18年12月からの米中貿易交渉)・軍事(中東からの米軍撤退開始、2回めの米朝首脳会談への調整)ともに、政府機関が閉鎖中にもかかわらず進ちょく状況がとても順調とみてとれます。
自国第1のアメリカの経済・軍事外交は、反トランプ抵抗勢力たるグローバリスト集団といかに戦いながら、市場を取り巻く世界情勢をどのように塗り替えていくのでしょうか?

▼壁の舞台裏には、麻薬と人質・奴隷。資金源の犯罪組織は撲滅へ

米民主党が南側国境沿いの壁の予算を断固拒否する背景には、なんと違法ドラッグと人身売買に関する犯罪利権が伺い知れます。
19年1月8日、トランプ大統領はホワイトハウスの執務室から国民に向けて放送演説。その冒頭では、アメリカのヘロインの90%が南側の国境から流入する事実と、不法入国させられた大勢の子どもたちが人身売買目的と推察される組織の人質となっている実態が紹介されました。抵抗勢力のグローバリスト集団のなかには、とんでもない悪党とギャングが存在するようですね(下記)。

「南側の国境は、覚せい剤、ヘロイン、コカイン、フェンタニルなど違法ドラッグの巨大なパイプランインだ!ヘロインによる被害だけでも毎週300人の米国民が殺され、ヘロインの90%は南側の国境から流入する。(中略)先月、2万人の移民の子が不法にアメリカに連れてこられ、人数が激増。この子どもたちは、邪悪な悪党と残忍なギャングの人質になっている」

「違法ドラッグの対策費用は年5,000億ドルで、われわれが議会へ要求している壁の費用57億ドルよりもはるかに巨額だ!しかも壁の費用は、メキシコとの新たな貿易協定により間接的にまかない続けられる」
「連邦政府が閉鎖中なのは、民主党が国境警備費を予算承認しないことがたった1つの原因。(中略)国境を守り政府を再開させる予算法案を民主党が通過させることが、唯一の解決策だ!」
トランプ米大統領(Jan 8th 2019)執務室からの放送演説

アメリカを守る壁の必要性を強く説いたうえトランプ氏は、その大きな費用対効果とメキシコから費用を実質回収できるメリットを強調しました。
米政権が議会へ要求している壁の予算57億ドルは、年5,000億ドルの違法ドラッグ対策費よりもはるかに安く済み、しかもアメリカに有利な新貿易協定(18年11月に署名したUSMCA)を結んだメキシコとの貿易収支改善などの経済効果でまかなうことが可能なのです(上記)。

それでもなお民主党が壁をかたくなに拒むのは、まるで違法ドラッグや人身売買の利権が彼らの資金源だと物語っているようですね。トランプ政権がたっぷり確保済みの軍事予算だけでなく民主党の合意を要する国境警備予算も用いた壁建設にこだわるのは、社会を蝕む反トランプ抵抗勢力の悪しき実態を露わにしながら天敵の悪しき資金源を元から断つ狙いがみてとれます。

人身売買組織の人質・奴隷を根絶やすためのトランプ政権の取り組みは、17年2月の人身売買集団などの国際犯罪組織を解体する大統領令*)の発動からはじまりました。
同年12月、そんな悪党どもの財産を差し押さえる大統領令*)に続き、トランプ氏は南北戦争(1861-1865)のリンカーン大統領に続き奴隷解放宣言*)に踏み切ったのです。翌18年1月、車両や路上での人身売買を禁じる2つの関連法*)が議会成立し、大統領署名のうえ公布されました(下記および脚注)。

「われわれは、奴隷制と人身売買を阻止する2018年1月中に、人々を奴隷化させる悪を根絶やことを改めて約束する。(中略)いま推定25百万人の人々が、性と労働を目的とした人身売買の犠牲となっている

「17年2月、人身売買集団などの国際犯罪組織を解体する大統領令*)に署名した(中略)。まもなく、商用車両や路上での人身売買を禁じる2つの法案*)(S.1536、S.1532)に署名する。(中略)アメリカは人々の生命と尊厳を尊重し守り続ける国でありたい。われわれは、いっそうの努力でもって、現代の時代遅れの奴隷制を確実に廃止していく
トランプ大統領(Dec 29th 2017)ホワイトハウス公文書
『2018年1月は奴隷制と人身売買を阻止する月と宣言*)

なお、18年3月には軍事裁判で民間人を裁くことができるよう裁判手続きを改正する大統領令*)が発動され、以後アメリカの非常事態宣言に向けた準備が急速に進められたと推察されます。

19年1月25日、トランプ大統領のホワイトハウス外交応接室からの放送演説では、DACA(幼少時に親に連れられ不法入国した若者の強制送還を免除する措置)の3年延長などと引き換えに、南側国境の壁建設の議会承認を改めて催促しました。

しかし、民主党のペロシ下院議長は演説開始前に断固拒否。反トランプ抵抗勢力にとっては、不法移民の身の上よりも不法移民を流入させる仕組みを守ることが大切なようですね。政府機関閉鎖(場合によっては非常事態宣言へ)の緊迫情勢のもと、米政権と議会との間のこう着状態は長期化する可能性が高い。

▼北の非核化を中国が支え、在韓米軍撤退。ドル切り下げ不均衡是正へ

一方でトランプ政権の外交は経済・軍事分野ともに、両分野の間であるいは内政との間で相乗効果を発揮しながら、進ちょく状況が大方の予想よりも順調とみてとれます。

関税上乗せ合戦が続いている米中貿易交渉は、18年12月に中国が米国産の大豆とLNGの輸入再開への準備をはじめたのに続き、19年1月18日には「対米黒字額No.1の中国がアメリカからの輸入額を毎年拡大し24年までに黒字ゼロを目指す計画を示した」との報道を受けて主要国の株価と米ドルが反発しました。
実現性の乏しい大言壮語にアメリカをはじめ世界の市場が好感した背景には、2回めの米朝首脳会談に臨むアメリカへの中国からの大きなサポートがあります。

19年1月10日の中朝首脳会談は、中国の習国家主席が来たる米朝首脳会談の開催への支持を表明するとともに、共同声明のなかに「北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む」と盛り込まれました。「責任もって北朝鮮へ積極関与せよ」とのトランプ政権からのたび重なる強い催促に、中国はようやく応えたのです。

朝鮮半島の完全な非核化の実現性は、19年2月末ごろ開催される第2回米朝首脳会談での最大の焦点。その責任の一端を担う中国の北朝鮮への関与積極化により、米朝合意へ至る可能性がいちだんと高まったのです。

韓国を含む朝鮮半島を非核化するためには、核兵器をもつ在韓米軍はもちろん半島から撤退する必要があります。1月から中東の米軍撤退を本格化させているトランプ政権は、歴代の政権が現地でなんと7兆ドルも財政を費やしてきた愚かな歴史を繰り返し非難していることからも、半島非核化へのプロセスの米朝合意後には在韓米軍撤退へ踏み切るでしょう。

海外撤退した米軍が弾道ミサイルなど超高価な兵器のいらない国内の国境防衛を担うことにより、現場の軍人たちの雇用を守りながらアメリカの財政を最も圧迫してきた軍事費が削減できます。そのためには、政府機関を長期閉鎖させてでも国境沿いにをつくることが必要なのです。

深刻な双子(財政と貿易)の赤字を減らしたいトランプ政権の外交は、財政と貿易を同じ次元で交渉・取引する点が大きな特徴。財政赤字の元凶となっている軍事費の削減に協力する中国は、米中貿易交渉の場でその恩返しを受けられると想定されます。

米国品の輸入拡大とともに中国が不均衡是正への道筋を示すことにより、3月1日の期限までに交渉合意に至り、関税のさらなる上乗せは回避される可能性が高い。非関税障壁に該当する補助金を伴う中国のハイテク産業育成への重要国策「中国製造2025」は、その主旨を実質的に貫き通せるでしょう。

このようにメキシコとの国境の壁建設は、違法ドラッグの流入と子どもたちの人身売買を防ぐことにより抵抗勢力の資金源を断つだけではなく、米軍の海外撤退での財政再建と貿易不均衡の是正を通じて双子の赤字を改善させる、米政権の一連の政策のなかで実は中心的役割を担っているのです。

なお、アメリカが貿易の不均衡と赤字を減らすためにもう1つ大切なのは、黒字国の稼ぎが対米投資でキャッシュバックされる仕組みのもとで不自然に超割高な水準が維持されてきた米ドルを大幅に切り下げること。

英エコノミスト誌(19年1月10日)の購買力平価”ビッグマック指数”によると、ドルの中国元に対する理論価格が1ドル=3.75元に対し、市場実勢1ドル=6.85元はドルが元に対しなんと83%も割高。日本円に対しては、理論価格が1ドル=69.9円に対し、市場実勢1ドル=108.4円はドルが円に対し55%割高な状態。
米国製品が日中の製品と同じ価格競争力をつけるためには、実はドルが3〜5割切り下がる必要があるのです。

1980年代から双子(貿易と財政)の赤字が膨らみ続けているアメリカは、オバマ前政権のときからデフォルト騒動と政府機関閉鎖を繰り返しており、すでに明らかな実質破たん状態とみてとれます。今般の米政府機関閉鎖が長期化した場合には、正式なデフォルト宣言に踏み切ることでドルが劇的に切り下がり、アメリカに競争力を取り戻すチャンスが訪れるかもしれません。

アナリスト工房 2019年1月22日(火)記事

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*)人身売買組織の人質・奴隷を根絶するためにトランプ政権のときに制定された主な法令と公文書、軍事裁判で民間人を裁くことができるよう裁判手続きを改正する大統領令は次のとおり。
・大統領令『Presidential Executive Order on Enforcing Federal Law with Respect to Transnational Criminal Organizations and Preventing International Trafficking』Feb 9th 2017
・大統領令『Executive Order Blocking the Property of Persons Involved in Serious Human Rights Abuse or Corruption』Dec 12th 2017
・ホワイトハウス公文書『President Donald J. Trump Proclaims January 2018 as National Slavery and Human Trafficking Prevention Month』Dec 29th 2017
・Public Law 115–99(S.1536)『Combating Human Trafficking in Commercial Vehicles Act』Jan 3rd 2018
・Public Law 115–106(S.1532)『No Human Trafficking on Our Roads Act』Jan 8th 2018
・大統領令『2018 Amendments to the Manual for Courts-Martial, United States』Mar 1st 2018