中国経済減速の最大の被害国ニッポン

「2015年1−9月の米中間の貿易額によると、中国は初めて米国のいちばんの貿易相手に浮上している。一方、カナダは2位に転落してしまった。」

米タイム誌(Nov 23, 2015号)の記事『DIGITS』

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2015年11月25日(水)アナリスト工房

国と国との間での貿易は、当事国の経済を大きく左右します。その収入と支出でみた儲けを表す「貿易収支(=輸出額-輸入額)」は、大切な経済指標GDP(国内総生産)の構成要素の「純輸出」に相当するからです(*)。

貿易収支が改善傾向にある国は、その国の商品への海外需要の増加と生産高の上昇を通じて経済が潤い、GDP向上へと結びつきやすい。逆に、貿易収支が悪化基調の国は、経済ならびにGDPが伸び悩む(あるいは落ち込む)ことが多い。

今年は、貿易収支第1位・GDP第2位の中国の経済減速に伴い、世界的な貿易取引縮小の悪影響が懸念されています。

中国の1−9月の貿易額は、冒頭で引用した対米取引が前年同月比2.0%増加と順調ですが、取引全体では8.1%も減少しました。

全体の内訳は、輸出が微減に対し輸入が2ケタ減。結果、貿易収支の黒字額はなんと83%も上昇しています(図表:**)。輸出伸び悩みを輸入削減でカバーしている状況がみてとれますね。

一方、世界一の貿易黒字国の黒字額膨張は、それ以外の国々は収支が大きく悪化していることを意味します。なかでも、いちばん悪化したのはわが国です。

今年1−9月の日本は、対中貿易の額が前年同月比11.1%も減少。しかも、輸出額が輸入額よりも大きく減ったため、黒字額がなんと43%も落ち込んでいます。

商品別には、中国から日本への電算機(周辺機器を含む)・電子部品・通信機の輸入減少よりも、日本から中国への自動車(部品を含む)・産業機械・原材料の輸出減少が著しい(***)。

結果、対中黒字額が韓国の1割の水準にまで低迷したわが国は、2四半期連続(4−6月、7−9月)でのマイナスGDP成長すなわち景気後退に陥っています。

対中貿易での輸出が輸入よりも大きく減少したことにより収支が悪化しているのは、最大の取引相手の欧州(1−9月の赤字額が前年同期比14%拡大)、わが国と同じ貿易立国の韓国(黒字額が同21%縮小)も同様です。

とはいえ、足元10月の対中貿易額は韓国が日本を逆転しており、そのペースが続けば年末までの今年1年の順位も日韓入れ替わると想定されます。それだけ、わが国が中国ビジネスのシェアを失ってしまう危険があるといえましょう。

貿易赤字No.1の米国の対中取引は、元々少ない輸出減少の一方で比較的多い輸入が増えたため、1−9月の赤字額が前年同期比15%拡大。とはいえ、主要国のなかで貿易額を順調に伸ばしている点が注目されます。

中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に象徴される新たな国際体制にいまのところ不参加方針の米国は、そのデメリットをカバーするために、実は2国間での貿易強化に必死に励んでいるようですね.。

なお、足元10月を含めた年初来の対中貿易額は、米国が欧州を逆転し初の首位に浮上しています。

以上、中国経済減速の世界への悪影響は、中国の輸入急減による貿易黒字膨張に伴い、他の国々が対中貿易での収支悪化を通じて経済縮小することにより被っています。

中国の主要な貿易相手国・地域(欧州、米国、日本、韓国)のなかで、輸出立国にもかかわらず対中貿易収支が最も悪化した日本(1−9月の貿易黒字が前年同期比43%減)は、中国経済減速の悪影響をいちばん被っているといえましょう。

わが国がいまの景気後退の状況から脱するためには、GDP第2位の国との貿易取引の規模と黒字額を伸ばすことが欠かせません。

欧州の主要国(ドイツ、イギリス、フランス、イタリアなど)や韓国は、中国主導の国際体制を象徴するAIIBへの参加をすでに決定しています。米国の産業界は、中国敵視の政府に代わって、中国とのビジネス交流に積極的です。

一方、いまだAIIBへの参加を表明せず、しかも中国との交流が停滞気味のニッポン。そんなわが国の経済先行きが危うい。

株式会社アナリスト工房

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*)GDP=国内需要+純輸出(輸出額ー輸入額)。

**)対中貿易の額は、中国海関総署の米ドル建てでの公表値に基づく。

***)日本の対中貿易の商品別動向は、わが国財務省の公表に基づく。