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終活の資金計画を見直そう(PB分野)

2014年3月10日(月)

「家に遺骨の入った骨壺はあるが、墓を用意できなくて、そのままという家も少なくない。東京では、そうした家が10万件程度存在するとされるが、そんな数ではおさまらないように思われる。」
-島田裕巳 著『墓は、造らない』大和書房(2011)

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とにかく墓は高い。鎌倉新書の運営するサイト「いいお墓.com」によると、実際に購入された墓の平均価格は、なんと183万円(墓石131万円と永代使用料52万円の合計:2012年12月の調査結果)。これまた高い葬儀費(葬儀本体・寺・飲食の費用と香典返しの額)とともに、価格は下がってきているとはいえ、まだまだ高値圏です。

これらの冠婚葬祭の「葬」にかかる費用は、行き場を失った遺骨の社会問題(冒頭)を引き起こしているだけでなく、PB(プライベート・バンキング)顧客のライフプランニングでの資金計画(資金収支のキャッシュフロー表)を描きづらい原因となっています。
そこで今回は、ライフステージの最終段階での資金収支改善を目的に、葬の費用負担の軽減策を取り上げます。

その前に、そもそも墓はなぜそんなに高いのでしょうか?
次の一般的な例を題材に、アナリストの視点で説明します。

<例> 会社を定年退職した直後のK氏(65才)は、このたび亡くなった妻(享年62才)の葬儀を終え、墓の購入を検討中。その墓は、当初200万円(墓石と永代使用料の合計)、以後1万円の管理料が毎年かかる。

一般に墓の費用は、当初の墓石と永代使用料(上の例では合わせて200万円)だけでなく、永代にわたり管理料(年1万円)が生じます。
ここでの注意点は、ユーザー(K氏)が取得できるのは墓の土地そのものでなく、その使用権に過ぎないこと。また、やがて墓を受け継ぐ者がいなくなり管理料の納付が途絶えると、墓もその中に埋葬されている遺骨も撤去されてしまうリスクです。

この点は、アパートを借りた人がその物件を所有できないため家賃を納め続けないとそこから追い出されてしまうことと、同様の仕組みです。
すなわち墓は、賃借アパートと同様に、実質的にはレンタル物件と解釈できます。単に借りるだけにもかかわらず、ユーザーの当初の高額負担は理不尽といえましょう。

そして、管理料(年1万円)が墓のレンタル料と見なすことができます。その年当たりの費用は、当初の負担(200万円)よりも小額とはいえ、ユーザーが毎年ずっと納め続けなければなりません。超長期にわたる借金の利払いのように、累積してゆくと大きな額と化します。
将来の世代に重い費用負担を背負わせるのは、逃げ切り型の無責任なライフプランニングとなってしまい、大半の人々の終活の目的にも反するでしょう。

以上により墓は、実質レンタル契約にもかかわらず当初の負担も重いため、ユーザーが得られる便益に対し支払う費用総額が著しく割高なのです。しかも、レンタル料(管理料)が納められなくなると、墓が撤去されてしまう危険を伴います。
そこで終活では、埋葬にかかる費用負担を当初の1度限りとすることにより、埋葬中止のリスクを回避させるとともに費用水準を適正化することが大切です。
当初のみの埋葬費用はいくらぐらいに是正できるのでしょうか?

前回「終活のリスクを改善しよう(PB分野)」の本山納骨のとき筆者の隣にいらした遺族は、当日の納骨費用4万円が埋葬の総額と推定されます。
なぜなら、筆者も含め遺族の大半は仏壇に残っていた一部の遺骨(分骨)を入れた「小さな骨壺」を持参したのに対し、上記K氏と同年輩の彼は火葬場から持ち帰る全ての遺骨(全骨)の入った「大きな骨壺」を抱えていたからです。
その彼は、従来の一般的な墓を利用せず、宗派の中核の寺での合葬のみを選択されたと見受けられます。

他の遺骨との合葬の方式をとる本山納骨は、墓のような個人あるいは家ごとの構築物を伴わない代わりに管理料がないため、その未納も特定の故人の遺骨が掘り返されるリスクもありません。
埋葬の支払負担を1回に抑えることで、彼が費用の適正化とともに埋葬中止のリスクを回避したのは、賢い選択といえましょう。

また本山納骨を利用すると、故人の遺族が途絶えた場合でも、僧侶たちが毎年の彼岸にお経を読み続けてくれます(**)。
故人の冥福を祈り埋葬・供養する葬の目的を将来にわたり遂行できるよう、手続きを1回で見事完結させた彼に敬意を表します。

なお筆者には、特定の宗教行事を推奨する意図は決してございません。ただ、従来の墓と性質の異なる埋葬方法とを比較検討することは、終活のリスクと費用の見直しに役立つと思います。その際の検討・議論の叩き台として、当HPの記事をご活用頂けると幸いです。

株式会社アナリスト工房

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*)日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」(2014年2月公表)によると、葬儀費用の平均価格は189万円。
**)本山納骨にかかる費用負担額とサービス内容は、行なう寺(本山)により様々。上記はその一例です。