今週月曜(2012年5月28日)、「正義の哲学者」として著名なマイケル・サンデル氏の講義を受講しました。受講者はこれまでで最大の5千名。積極参加型の議論は夜遅くまで白熱し、東京国際フォーラムの特大会場は大盛況でした。
講義の前半は、新刊「お金で売買してはいけないもの(What Money can't Buy)」の中からのテーマ。特に、命名権に関する議論(会場での題材は「 市の命名権」)が、周りの受講者の賛成・反対がほぼ同数だったこともあり、興味深い内容でした。
ちなみに、賛成派は「市が厳しい財政を補うために命名権を企業に売るはやむを得ない」、反対派は「市民のアイデンティティを犠牲にしてまで命名権を売るべきではない」が主な意見です。
3F席の筆者からのサンデル氏は、こんなに小さな御姿でした
後半のテーマは、日本が直面している緊急課題。中でも会場の意見が割れたのは、「全国の自治体は被災地の瓦礫を受け入れるべきか?」、「原発を再稼働すべきか?」。これまでの我が国での議論と同じく、賛成派と反対派との議論は平行線でした。
なぜなら、各人が何を重視するか(被災地への支援、放射能からの危険回避、産業のための電力確保)により、賛成か反対かの意見が自ずと決まります。その際に重視するものが国民の絆、命の安全、仕事・会社の死守といった各人にとって絶対必要な要素であり、お互い譲れないからです。
講義の締めくくりにサンデル氏は、「アラブの春」の中東の人々に続き、日本人も1人1人が当事者意識をもって意見を主張すること。そのためには、今後も議論を続けてゆくことの必要性を説き、いつものように格好良く去っていきました。
しかし筆者は、このままでは上記議論が平行線のまま決断が下せず、手遅れになってしまうことを心配しております。サンデル氏の講義の根底にある「共同体主義」は、それを正しく活用できない限り、意見の割れた状態のままいつまで経っても物事の結論が導き出せないからです。
共同体主義とは一言で言えば、社会の絆と助け合いを重視した思想です。
311大震災以降、若年層を中心に共感を集めている共同体主義者の考え方とは、数ある思想の中でどのようなものなのでしょう?また、物事の中々進まない我が国では、その考え方を上手く活用していくためには何が必要なのでしょう?
次回へ続く(2012年5月30日)