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米国デフォルト騒動の行方は?

2013年10月16日(水)

「例えば、今は健康保険に入っていない27才の女性は、"オバマケア"のサイトで携帯電話代よりも安く、質の高い健保に加入できるようになります。」
(オバマ米大統領:9月24日のクリントン元米大統領とのテレビ対談での説明)

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米国の「デフォルト騒動」が、またまた世界中からの懸念を集めている。
10月31日の国債利払いまでに、政府債務残高の法定上限(現在は16.7兆ドル)を引き上げられなければ、米国のデフォルト(米国債の債務不履行)は必至の状況にある。しかし米議会では、為替・株式市場の期待に反し、その上限引き上げ交渉が難航を続けている。
なぜ、米国の政府債務上限は簡単に引き上げられないのか?

与党の民主党は、国民皆保険の制度(冒頭のオバマケア)がクリントン政権時代(1993-2001年)からの念願である。
オバマ大統領の率いる政権も、シリアへの軍事介入に踏みきれなかったことに続き、次期FRB議長に意中の人材(サマーズ元米財務長官)を指名できず、失った指導力と支持率を社会保障の大盤振る舞いで取り戻したいようだ。

一方、緊縮財政で小さな政府を目指す共和党は、政府支出を膨張させる国民皆保険を断固として許さない。これまで交渉の打開策として打ち出された共和党案は、いずれもオバマケアの施行を阻む内容ばかりだ(*)。
よって、債務上限引き上げのために必要な2党間の合意は、なかなか成立しない。

仮に、両党が歩み寄ることで政府債務残高の法定上限を引き上げられたとしても、一時的な先送りに過ぎず、問題の解決には程遠い。
2011年8月、米国はデフォルト寸前で債務上限(当時は14.3兆ドル)を引き上げ、危険をひとまず回避した。しかし、その後わずか2年で債務残高が17%も急増している。世界一の借金大国ニッポンでさえ、その間の債務残高は9%増に過ぎない。米国の財政規律は完全に失われたといえよう。

次はオバマケアが加わると、世界一の高額医療費を国が背負うため、債務膨張のペースがいっそう加速してゆく。近い将来に財政が行き詰まり、米国はデフォルトに至るだろう。

会社のデフォルトでは、株主が負担できなかった損失額を債権者が被ればよい。それに対し、国家には株主がいないため、デフォルト損失は債権者のみが負担を強いられてしまう。
わが国の米国債の保有残高は1.1兆ドル、借金大国とはいえ同時に中国(1.3兆ドル)に次ぎ第2位の債権大国でもある(2013年7月時点)。米国債のデフォルト時には、その元利と通貨の切り下げを通じて、これらの海外保有国の富が失われると想定される。

米国債が安全資産でなくなるとともにドルが基軸通貨の座を失っても、代役が見当たらない。
日本も欧州も、大きな政府債務問題を抱えているため、その国債も通貨も役不足といえよう。中国の国債と人民元は、国家資本主義の体制をとる同国の厳しい規制のため、まだまだ市場で自由に売買できないのが大きなネックだ。

海外投資と為替の世界では、いったい何をリスクと価格の評価基準にしたらよいのかさえ分からなくなり、市場参加者はしばらく途方に暮れるだろう。

株式会社アナリスト工房

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*)まず、共和党案の「健保加入の義務化をオバマケア施行から1あるいは2年遅らせる」が実施された場合、最初の1年間の加入希望者は、すでに病気の者が中心となる。健康な者の大半は義務でもなければ加入しないため、保険料が超高額となってしまう。よって、大半の加入希望者が保険料を負担できないオバマケアは、最初の段階で挫折する。
また、もう1つの共和党案の「政府債務上限をひとまず数週間分あるいは数カ月分だけ引き上げる」は、短期間経過するたびにデフォルト騒動を繰り返すことになり、債務問題を長期にわたり引きずる要因となる。