次回予定している「包括利益2」の前に、今回はそこで用いるコンセプト「時価主義」に触れておきたい。 貸借一致の原則から、株主の持ち分である純資産額(株主価値)は、株式時価総額の理論値となる(図表)。 即ち、企業価値評価、負債の時価評価、株式分析の作業をするまでもなく、決算書のB/Sを一目見るだけで分析が済んでしまう。アナリストは、個別企業の分析で浮いた時間を、業界での比較分析や製品の市場分析にたっぷり活用できる。 今のところ実際に時価でB/S計上されているのは、保有する株式や減損直後の事業資産に限られる。しかし、会計制度の改訂ラッシュを受けて、時価評価の対象が着実に拡大基調にある。 2014/3期の本決算からは、退職給付がらみで企業の抱える含み損である「積立不足(未認識債務)」が加わる方向。時価の精度は、IFRS/米国基準に劣らないレベルへと、大きく向上してゆく見込みである。 企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)には、仕入先、販売先、監督官庁を始め大勢いる。時価主義は、中でも銀行と社債・株式投資家が投資価値を測ることを重視したコンセプトと見受けられる。 「そもそも、誰のための会計か? また、会計の目的は何か?」 新たな時価主義の下、その答えは、かつての取得原価主義の時代とは大きく異なる。債権者と株主のために金融商品の市場価値把握を目的とする会計へと、既に大きく舵が切られている。 時価主義については、様々な立場から色々な理由での賛成・反対意見があろう。この場では、金融商品の評価を手掛けるアナリストとしての立場から、筆者の意見を申し上げたい。 「財務諸表から一段と有意義な情報が得られる、時価主義には大賛成!」 2011年6月11日(2012年2月28日修正) 株式会社アナリスト工房 |
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