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想定為替レート(保守的に)

「御社の今期の想定1$=75円は(実勢1$=80円の中)かなり円高ですね。理由をご説明願います」
〜2012年5月2日: ヤマハ(株)の決算説明会での質疑を抜粋・要約〜

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GW明けの週は、日本企業の前期(2012/3期)の本決算発表がピークを迎える。前期決算とともに今期(2013/3期)の業績予想が公表される。為替の先行き不確実性の高い今期は、各社の業績予想値だけでなくその前提となる「想定為替レート」が市場の関心を集めている。

上場企業は、今期の売上と利益(営業利益、経常利益、純利益、1株当たり利益)に関する業績予想を、前期の決算書に含めて開示する。これらの予想の見積もりは、海外との貿易や在外子会社での事業に伴う売上・利益予想について、外貨建ての金額を円貨額に換算の上で国内取引分と合算し行なう。その際、外貨から円への換算に想定為替レートを用いる。
すなわち想定為替レートは、事業計画の策定ならびにその情報開示を目的に、会社が見積もった今期1年間の平均為替レートである。

今期の輸出企業の想定為替レートは、円($/円)は78から80円、ユーロ(€/円)は102から105円が主流である(2012年5月10日現在)。


これらの想定為替レートは、見積もり方法は各社の裁量に任されているが、一般にどのように決定されるのだろう?

会社によりバラツキはあるが、決算発表の数週間前の為替相場の値動きを最も重視して、想定為替レートを決めるケースが多い。
前期の末月(2012年3月)は一時84.18円まで円安進行したが、今期になって円が強含み4月11日の東京市場終値は80.61円。概ねその時点で、2週間後(4月25日)から本格化する本決算発表に備え、保守的にかつ円高基調を踏まえ78から80円と定めたのが上記主流派と見受けられる。

なお冒頭の楽器メーカーは、円最高値(75.32円)を付けた前期に、第4四半期(2012年1-3月)の業績予想の下方修正を余儀なくされた。当時の市況を踏まえ修正後に適用した想定為替レート(75円)を、今期分にも引き続き使用している。結果、厳しめの想定為替レートであることをご参考まで。

程度の差はあれ、会社での想定為替レートの見積もりが保守的になりがちなのはなぜだろう?

輸出企業を例に説明する。輸出企業は、今期の実際の為替レートが想定為替レートよりも平均的に円安となった場合に、業績面で有利となる。外貨建て取引の円ベースでの売上増や為替差益の貢献を通じ、売上・利益が予想を越え上方修正への要因となるからだ。逆に、想定為替レートに劣る円高状態が続いた時は、円ベースでの売上減少と為替差損が響き、下方修正につながりやすい。
会社としては、市場にネガティブに(株価への悪材料と)受け止められる下方修正はなるべく避けたい。上方修正した場合の心地良さよりも、下方修正を余儀なくされる時の風当たりの方がはるかに強いからだ。その点は、輸出企業も輸入企業も共通である。
結果、業績予想ならびにそれが基づく想定為替レートは、会社の平均的な将来見通しよりも保守的な見積もりとなるケースが大半を占める。

なお先日の「日本株の展望(2013/3期は?)」で、日経平均株価を構成する225社の今期の純利益40%増とのアナリスト工房予想を紹介した。その際に用いた想定為替レートは、円が77円、ユーロが100円。欧州債務危機の深刻化や米国政府債務の上限問題により、日本企業に負けず円高とみていることを付け加えておく。
弊社の見積もりも保守的かどうかは、皆さんのご想像にお任せします。

2012年5月10日