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サッサと終えたい日本の量的緩和

2014年11月25日(火)

先日の外国為替のコーナーでは、日銀の追加緩和とGPIFの海外投資拡大(ともに10月31日公表)の連携プレーが実質的な円売り介入であることと、その目的がドルと米国債の買い支えと見受けれることを紹介した(日銀の追加緩和の本質は為替介入)。

日銀は、2008年12月から量的緩和(国債などの買い入れによる市中への資金供給)を続けており、しかもこれまで2度にわたりその規模を急拡大している(昨年4月、今年10月末)。
今回は、わが国のマンネリ化した緩和策のとんでもない現状を紹介のうえ、懸念されるその日本経済への影響を取り上げたい。

量的緩和が膨張しはじめた2013年4月以降、日本の政府債務残高は47.3兆円の増加に対し、政府債務をまかなう国債の日銀の保有高は103.9兆円も膨らんだ(14年9月末時点:*)。すなわち、220%(=103.9/47.3)の"財政ファイナンス"と解釈できる。

財政ファイナンスとは、政府が発行する国債の大半を中央銀行が引き受けることをいい、財政規律が失われ国家破綻への要因だ。
わが国の量的緩和は、国債の発行額以上にその日銀保有額が増えていることから、明らかな財政ファイナンスといえよう。

100%でさえ危険な財政ファイナンスがその水準をはるかに超える規模で展開中であることは、日銀が投資家(わが国の金融機関・年金基金など)の保有する国債を市場を通じて大量に購入していることを意味する。
日銀への国債の売却に応じる投資家は、それ以外の資産(国内外の株式、海外債券など)を新たに購入するしかない。なかで最も市場規模の大きな米国債は、日本勢の保有高が上記1年半の間に12.6兆円(1,068億ドル:**)も急増。わが国から大量の投資マネーが流出している。

日本勢による外貨建ての海外資産の購入は、円売り・外貨買いの為替を伴う。よって、2013年4月以降の日銀の100%を超える財政ファイナンス(量的緩和)は、一貫して外貨と海外資産の買い支えが目的とみてとれる
今般の日銀の追加緩和が米国のQE3(先月終了した量的緩和の第3弾:米国債などの買い入れによる市中への資金供給)を実質的に引き継いでいること(日銀の追加緩和の本質は為替介入)からも、わが国の緩和策は日本経済のための政策とは考えづらい

輸出額が輸入額を下回る貿易赤字国にもかかわらず、量的緩和での円安誘導が円へ換算した赤字額の拡大に作用し、赤字体質がいっこうに改善していない。
日本の輸出企業が業績好調なのは、期待されている輸出でなく、実は海外進出した先での生産が伸びているからである(***)。筆者が日頃お世話になっている先の多くにも、同様の傾向がみられる。
海外生産の好調は、生産を行う現地国のGDPと税収を潤すため、わが国のGDPと税収にはほとんど貢献しない

また、緩和策が促す円安は輸入物価を上昇させる要因である。さらに、今年4月からの消費増税が物価高に拍車をかけることで国民の節約志向を高めたため、国内需要はすっかり落ち込んでしまった。
結果、日本のGDPは今年4-6月に続き7−9月もマイナス成長となり、景気後退に陥っている。

わが国の政府債務残高のGDPに対する比率(昨年は2.4倍と世界ワースト1)は、すでに第2次大戦末期(1944年は2.0倍)よりもはるかに悪い。国内販売も輸出も税収も伸び悩むなか、今年もそのカントリーリスクをみる指標のさらなる悪化が懸念される。

先週の円相場は一時118.98円(11月20日)まで円安進行。先月の高値(10月15日は一時105.20円)からなんと12%も急落しており、日本売りの様相が急速に強まってきた。
幸い日本国債の92%は国内で消化されている(2014年6月末時点)ため、今ならまだわが国の国家破綻を未然に防ぐことは可能だ。

日本経済のためにならない量的緩和は、見切りを付けサッサと終えることが大切。国家歳出削減に大なたを振るうとともに、今後の歳出をまかなう日本国債を日銀以外のわが国の投資家が支えることで、健全な財政規律を取り戻したい。

株式会社アナリスト工房

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*)日本の政府債務残高は、13年3月末が991.6兆円に対し、14年9月末が1,038.9兆円(財務省公表値)。日銀の国債保有高は、13年3月末が125.4兆円に対し、14年9月末が229.3兆円(日銀公表のB/S計上値)。
**)日本勢の米国債保有高は、13年3月末が1兆1,143億ドルに対し、14年9月末が1兆2,211億ドル(米財務省公表のMajor Foreign Holders of Treasury Securitiesに基づく)。
***)わが国の主力品を手掛ける乗用車8社は、2014年4−9月の輸出台数が206万台(前年同期比5.3%減)に対し、海外生産が842万台(同6.5%増)。海外需要分を海外生産でまかなう傾向がいっそう強まっている(日本経済新聞2014.10.28記事『車海外生産、7社が最高』に基づく)。