アンチ脱炭素を説く最強通貨2021

年初来上昇率No.1は、西側の愚策をまねない石炭爆買い国の人民元

2021年12月13日(月)アナリスト工房

太古から地球は、温暖化と寒冷化の歴史を繰り返している。大きな恐竜たちが生きていたときは、彼らの大量に食する熱帯植物が豊富に生い茂っていた実態から、いまよりも平均気温がはるかに高かったはずだ。やがて恐竜が絶滅した後も、地球の気候が一方的に暑くなることもなく寒くなることもなく、温暖化と寒冷化の時期はきちんと交互に訪れている。

だからこそ、いまも世界の圧倒的多数の人々は、まずまず許容できる気候のもとで安心して暮らすことができる。


にもかかわらず今年は、強引にでっち上げられた「一方的な温暖化傾向」に基づき、その原因として二酸化炭素を産む化石燃料を削減せよと迫る「脱炭素」への取り組みが、西側諸国で本格化してしまった。石炭・ガス・石油など化石燃料をどれだけ燃やすかが経済活力の測る重要指標なのに、不要な脱炭素のために化石燃料をやり玉にあげ減らそうとする取り組みは自虐的な経済破壊だ。


為替市場の参加者たちは、バイデン米政権が主導する西側の脱炭素の愚策に眉をひそめている。結果、年初来上昇率の上位2通貨は、首位が石炭の爆買いと大増産に励む中国の人民元、そして2位が天然ガス輸出の基盤を拡充したガス輸出首位ロシアのルーブル。今年は、東側の主要2カ国の通貨がトップ2を占めている(下記)。

【GDP上位国通貨の年初来上昇率*)2021年】 12月10日時点


1. 中国元(CNY): 7.97%

2. ロシアルーブル(RUB): 6.24%

3. カナダドル(CAD): 5.39%

4. 米ドル(USD): 5.37%

5. インドネシアルピア(IDR): 3.01%

6. 英ポンド(GBP): 2.31%

7. インドルピー(INR): 1.60%

8. スイスフラン(CHF): 1.24%

9. メキシコペソ(MXN): 0.48%

10. 豪ドル(AUD): ▲1.77%

11. 欧州ユーロ(EUR): ▲2.42%

12. ブラジルレアル(BRL): ▲2.44%

13. 韓国ウォン(KRW): ▲3.08%

14. 日本円(JPY): ▲4.09%

15. トルコリラ(TRY): ▲43.51%

とくに中国元の発行国チャイナは、為替でいちばん大切な貿易での稼ぎ貿易収支(=輸出額ー輸入額)が世界首位。10月の貿易収支845億ドルは、それまで最高だった昨年12月(758億ドル)を著しく上回り、最高記録を勢いよく更新(中国貿易統計)。10月からは、一方的な元高基調が鮮明だ。

「電力不足」は即復旧。揺るぎない巨額の貿易黒字が元高持続の活力

最大の貿易相手アメリカに対する貿易収支を8・9月に連続更新した直後の中国は、西側諸国に付き合い脱炭素に取り組むふりを始めた途端、あちこちで電力不足に陥りモノづくりの活動が一時停滞した。

しかし、火力発電や暖房に用いる石炭の輸入量が首位の中国は、ずいぶん速やかに石炭の輸入量と生産量を大きく伸ばし、11月までに電力不足は解消済み(中国石炭輸入、11月は今年最高 暖房期入りで需要増中国は石炭大増産でCOP26期間中に過去最高を更新)。これまた速やか過ぎることから、先行した電力不足はまるで石炭をたっぷり確保するための演出のようだ。


結果、最大の元高要因の中国貿易収支は、11月も依然高水準(717億ドル)。脱炭素の愚策に本気で取り組む過ちを犯したりしない限り、12月以降そして来年も、貿易の稼ぎ堅調とともに中国元は通貨価値を着実に高めてゆく展開が予想される。


なお、脱炭素推進の国際協調パリ協定の本質は、「緑の気候基金」を通じた先進国から新興国へのバラマキ援助。他のさまざまな国際援助と同様に、巨額の利権がみえみえだ。援助資金の主な行き先は、中国が国内および一帯一路(21世紀のシルクロード)の国々で建設する石炭火力発電所などインフラ構築プロジェクト。

だから、化石燃料をたっぷり燃やすことにより各地に貢献する社会インフラの意義を実感している中国は、脱炭素に本気で取り組む自己否定なんてまったく想定していないだろう。

アナリスト工房 2021年12月13日(月)記事

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*)GDP上位国は2020年の上位19カ国で、うち欧州の5カ国(独、仏、伊、スペイン、オランダ)が共通通貨のユーロ圏。年初来上昇率は、米ドルがBBDXY(Bloombergドル・スポット指数)、それ以外の通貨がBBDXYと各通貨の対ドルレート基づく計算値。