なぜ円高が止まらないのか?

「米国は借金を完済できる。お金を刷ってそれで返せばいいからね」

(グリーンスパン前FRB議長:2011年8月の米国債格下げへの発言)

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2011年3月の東日本大震災後も、日本からの輸出が落ち込んでいるにもかかわらず、円高傾向に歯止めが掛からない。同年8月19日、円相場は一時「1$=75.93円」と戦後最高値を更新。財務省と日銀の為替介入の効果も空しく、その後も高値圏での推移が続いている。

そもそも第2次世界大戦後の日本は、以下のようにほぼ一貫して円高への歴史を展開している。

今から40年前までは「1$=360円」の固定相場制。当時の為替市場では、常に1$当たり360円に(あるいは360円当たり1$に)両替されていた。しかも、基軸通貨の$は金に裏付けられており、外国の中央銀行は35$に付き1オンス(約31グラム)の金と交換できた(「ブレトン・ウッズ体制」)。

しかし、この$を基軸通貨とする固定相場制の下での「ブレトン・ウッズ体制」は、やがて崩壊に向かう。

1950年代からの日・独の台頭に伴い、世界経済に占める米国のシェアが低下。加えて1960年代からは、ベトナム戦争に伴う多額の戦費が財政を圧迫した。1971年、当時のニクソン米国大統領は$の金との兌換停止を発表(「ニクソン・ショック」)。続いて同年、米スミソニアン博物館で開催された先進国財務相会議で、日本は「1$=308円」への$切り下げを押し付けられた(「スミソニアン合意」)。

程なくして切り下げ後の水準維持も厳しくなり、1973年には為替水準を市場のメカニズムに任せる「変動相場制」への移行を余儀なくされている。米国が基軸通貨の価値を保つ責任を放棄した後は、$の下落に拍車が掛かる。

変動相場制のスタートから今年で38年になるが、米国の「双子の赤字」(貿易赤字と財政赤字)に依然歯止めが掛からない。赤字を穴埋めするために$が次々と印刷され、1$当たりの通貨価値が低下。結果この38年間、平均年3.4%のペースで$安・円高が進行している。

2011年8月、米国は債務の上限を従来の14.3兆$から16.4兆$へ引き上げた。雇用と税収が伸び悩む中、国の社会保障負担の増額に対応するためだ。一段の財政赤字の拡大は、今後さらなる円高への圧力となるだろう。

2011年9月24日