米インフラ開発計画は”一帯一路”
法人大増税が米国企業を国外移転させ、中国主導で開発推進へ
雇用回復は期待薄。バイデン放漫財政をまかなう米国債がピンチ
2021年4月7日(水)アナリスト工房
”21世紀のニューディール政策”として市場の期待を集めていたバイデン政権の2.25兆ドル規模のインフラ開発計画(3月31日発表)は、法人税の大幅引き上げ(税率21%→28%)を伴うことから、アメリカ経済に打撃を与え中国経済を潤すとんでない内容である。
このままでは、社会インフラ(公共交通、道路・橋・港湾など)の建設や必要な物資供給を担うはずのアメリカ企業が、大増税を嫌気し海外へ逃げてしまう。米国内の産業が空洞化するなか、中国企業(グローバル企業の中国拠点を含む)など外国勢がインフラ建設と物資供給の主な担い手となる可能性が濃厚だ。
そもそも、アメリカ史上最大のインフラ開発計画(21世紀のニューディール政策)は、米国企業を国外へ追い出す法人大増税とともに実施されるため、恐慌後の公共事業で最も大切な国内での雇用回復がほとんど期待できない。バイデン政権のインフラ開発は、主導する中国勢が史上最大の経済効果を満喫できるための”貢ぎ物”と見受けられる。
「アメリカ史上最大の増税を実施するジョー・バイデンの極端な計画は、中国などへの大いなる貢ぎ物だ。(中略)バイデンの計画は、アメリカ人労働者の職を奪い米国内の製造業を衰退させる一方、外注先の外国企業や巨大なグローバル企業に特別な税優遇措置を与えるからね」
「バイデン政権のアメリカは再び対中経済戦争に敗北しつつあり、その奇妙な数兆ドル規模の増税は経済的に完全降伏するための策略だ。パンデミックの悪影響を脱しなければならないときに、アメリカ人の雇用を犠牲にするなんてとんでもない!(中略)この増税は、ジョー・バイデンなど典型的なグローバリスト連中の裏切りだ」
トランプ第45代米大統領(Mar 31st 2021)公式声明
バイデン氏がメイドインチャイナの選挙不正集計システム”ドミニオン”に助けられ米大統領として祭り上げられた代償は、アメリカ経済に極めて重くのしかかりそうだ。
懸念どおりバイデン政権の大規模なインフラ開発が中国主導で推進された場合には、アメリカ全土が一帯一路(21世紀のシルクロード)と化し、アメリカ中心の西側の体制が終わるだろう。アメリカの法人大増税はインフラ開発をあえて中国に担わせるためのバックドア(裏口)とみてとれる。
「かつて中国は、あらゆる点でアメリカをお手本にしてきた。(中略)いまではアメリカが、国内外でのインフラ計画を発表し、中国と競おうとしている。少々困惑させられるが、中国は本当にアメリカのお手本となっているのか・・・。中国の一帯一路にふるってご参加ください」
GlobalTimes胡編集長(Mar 31st 2021)Twitter
課税強化を逃れるアメリカ企業の国外移転は、米国内での法人税収落ち込みを招く。アメリカの深刻な”双子の赤字”は膨張加速し、国家破たんに至り経済リセットを要する時期がずいぶん早期化するかもしれない。
そんな”バイデンリスク”を懸念した米国債市場では先週、10年物が一時1.776%と昨年1月以来の高利回り水準まで価格急落した。価格弱含みの不安定な展開は、今週も続いている(4月5日の10年物は一時1.745%)。
危ういバイデンリスクを被っているのは、日本勢の米国債投資での為替ヘッジに伴い、円安傾向の日本円相場も同様。年初来、米国債10年物利回りが0.1%上昇するたびに、ドル/円が90銭円安・ドル高に進む傾向がとても鮮明だ(図表)。
NY市場の日次終値(21年1月4日-4月6日)に基づく
米国債のリスク激増にもかかわらず円高・ドル安でなく円安・ドル高なのは、米国債の市場価格の変化に応じて、日本の機関投資家が為替ヘッジの金額を次々と増減させていることによる(下記)。
<外債投資の為替ヘッジと影響> ヘッジ状態を保つために
・米国債が価格上昇(利回り低下)→ヘッジのドル売りが増え円高へ
・米国債が価格下落(利回り上昇)→ドルが一部買い戻され円安へ
円高時のドル売りと円安時のドル買いが日本勢の為替差損を招く
いまの円安・ドル高は、米国債の価格下落に伴う為替ヘッジの影響にすぎない。バイデン政権の放漫財政を受けて米国債が売り浴びせられるなか、アメリカのファンダメンタルは著しく悪化傾向。にもかかわらず米ドルを買い続けるヘッジ操作の愚かさに、日本の投資家たちはすでに気づいているはずだ。
幸い、彼らが危うい米国債の売却処分を本格化し理不尽な為替ヘッジから卒業する機会は、今月中に次々と訪れる。来週から米国債入札が本格化する(4月12日:10年債380億ドル、13日:30年債240億ドル、翌週:20年債240億ドル など)。4月下旬には、今回のインフラ開発に続く第2弾(医療保険制度の充実化など)が早くも発表される予定。
鼻につく過度のバイデン放漫財政がいっそう加速し、財政をまかなう米国債は著しい需給悪化が懸念される。10年物が利回り2%の水準を突き抜け価格急落に拍車がかかる日は近いかもしれない(そのとき上記図表では、高利回りかつ円高水準の新たなプロットが近似直線のはるか右下に突然生じる)。善は急げ!
アナリスト工房 2021年4月7日(水)記事