米連銀のW引き締め リバースレポとQT

0.75%利上げにより魅力が倍増した、FRBの「US RRP」に逃避マネーが殺到

2022年6月20日(月)アナリスト工房

先週のアメリカの金融政策決定会合FOMC(14-15日)で決まった0.75%利上げに伴い最も人気を集めている金融商品は、米連銀FRBの「リバースレポ(略称:US RRP)」。FRBが米国債を担保にNY市場の金融機関から翌日物資金を借り入れるリバースレポは、資金を貸し出す金融機関勢にとって短期資金運用の最重要手段と化している。


利上げ直前の市場では、1994年11月以来の0.75%大幅利上げへの観測が突然強まりアメリカの債券・株式の価格が急落。とくに深刻なのは、米国債10年物の利回りが一時3.498%と2011年4月以来の水準まで跳ね上がった(価格が落ち込んだ)事実。QE(量的緩和)がすでに終わったなか、最大の買い手(QEを担ったFRB)を失った米国債の価格を支えらる有力な市場参加者が見当たらない。

債券市場からだけでなく株式市場からも逃げた大量のマネーが押し寄せたリバースレポは、先週14日まで6日連続で過去最高額を更新した。


利上げ後、資金逃避先のリバースレポは、適用金利が約2倍の水準へ跳ね上がったこと(0.8%→1.55%)により魅力を大きく高め、先週末17日には2兆2293億ドルまでさらに最高記録を塗り替え絶好調。

2021年3月からFRBが連日実施中のリバースレポは、以来毎日欠かさず実施され残高が激増傾向であることから、FRBがQEで市場へバラまいた巨額マネーの回収策と見受けられる。QE4(19年10月-22年3月の量的緩和第4弾)マネー4.95兆ドルは、リバースレポにより早くも45.0%回収済み(=2兆2293億ドル/4.95兆ドル:6月17日時点)。

QT終了の1年前にフライングして始まったQEの後始末は、超ハイペースの荒療治がいまも勢いよく加速中。「0.75%の大幅利上げの最大の目的は、厳しい荒療治を続けるためのリバースレポ金利引き上げにあり」と推察される。

▼さらに締め上げるQTの舞台裏は、米国債の価格急落が発した重大な警告

加えて、今月から米連銀FRBが新たに始めた量的引き締めQT(FRBが過去の量的緩和QEで買い取った米国債などを満期継続停止あるいは売却することにより、市場からQEマネーを回収する引き締め策)は、ひとまず月475億ドル(9月からは月950億ドル)のペースで、QEマネー回収をいっそう加速してゆく。

なお、今月半ば満期の米国債149億ドルの満期継続停止を皮切りにスタートしたQTの状況は、FRB週次公表のバランスシートには今週(6月22日時点分が翌日公表)から反映される。


基軸通貨の番人FRBは、米国債の価格が急落(利回りが急伸)するなか市中の1米ドルあたりの通貨価値を保つために、リバースレポとQTによる資金回収をなりふり構わず急いでいる。満期時にドル資金で償還される米国債は、将来のドル資金。米国債価格の急落は、やがてドル急落を招く可能性が高い。米ドル防衛のためにFRBは、情け容赦ないドル資金回収をいつまでも加速し続ける選択肢しかないのが実情。

「リバースレポの大幅利上げとQTの拡大による資金回収加速→市中の1米ドルあたりの通貨価値防衛の一方、米国債価格急落とともに将来のドル急落への懸念浮上→さらなるリバースレポ大幅利上げとQT拡大による資金回収加速」と、悪循環のFRB金融政策は、「見かけ倒しで幻の世界経済」の最期まで続くと想定される。合掌一礼。

「一極集中の世界秩序の時代は終わった。(中略)価値を失った米ドルや欧州ユーロ建てでは、商品を売りたくない。見かけ倒しで幻の世界経済は、真の価値をもつ実物資産に裏付けられた経済に置き換わってゆく」

プーチン露大統領(Jun 17th 2022)ペテルブルグ世界経済フォーラム

アナリスト工房 2022年6月20日(月)記事