金融緩和キラー新型コロナの特効薬
リーマン危機時を超えるハイペース緩和が効かず、封印を解かれたのは?
2020年3月19日(木)アナリスト工房
皇居付近をランニング中によく見かける一時避難中の外国人たちは、先月までは3人以下の中国人家族が圧倒的多数だったが、今月になってから南欧ラテン系のカップルがずいぶん増えた。その多くは、ヒョロっと背の高い優しそうなヒゲの濃い男同士。
1日でも早く南欧(スペインあるいはイタリアか?)のコロナウィルス騒動が収束し、彼らがそろって無事帰国できることを、地元の日本人を代表して筆者は心から願っている。
武漢発の新型コロナウィルス肺炎は、中国当局が街を閉鎖のうえ住居のドアを溶接し人々の移動に伴うさらなる感染拡大を防ぐとともに、病院では免疫機能が上向いた患者に的をしぼった選択治療が奏功。中国国内では、新たな感染・死者数の激減とともに騒動が鎮静化してきた。
一方、そんな荒療治が許されない日米欧など他の国々では、新型肺炎の蔓延とそれに伴う金融危機”コロナショック(2月24日− )”がますます深刻化している。
コロナショックの発祥の地アメリカは、日本と同様に新型コロナ検査キットがなかなか多くの人々に行き渡らない。しかも。その陰性・陽性の判別力に大きな問題を抱えているため、ウィルスが急速に広まってしまった。3月11日、アメリカの21・22番めの州(アリゾナ、ニューメキシコ)とともに首都ワシントンD.C.が疫病対策のために非常事態宣言に踏み切った。
翌12日早朝、米連銀は米国債などを担保に金融機関へ資金を貸し付け供給するレポオペに、25日物(枠500億ドル)を新設して臨んだ。が、SP500はその週2度めのサーキットブレーカー(前日比7%安)が発動され、NYダウは前日比2352ドル安(10.0%安)と過去最大の下げ幅で取引終了。緩和の効きが悪い。
そこで、アメリカ合衆国が国家非常事態宣言に踏み切った翌13日のレポオペでは、なんと実質無制限枠の28、31、84日物(いずれも枠5000億ドル)が新設された。以降、米連銀のなりふり構わぬ暴走オペが本格化した。
3月13日の米連銀はまた、実質的なQE4(量的緩和第4弾)での買い取り対象の米国債を従来の短期物だけでなく中長期物にも拡大のうえ、1日で370億ドルの国債を買い取ることにより市場への資金供給額をさらに膨らませた。
同日のNYダウは過去最大の上げ幅で反発したが、リーマンショックのときに続き激しく乱高下する株価が暗示する将来の不確実性に、市場では不安と悲観が広まるばかりだった。
週末に開催された臨時FOMC(米金融政策決定会合)では、政策金利を1%引き下げ0−0.25%とリーマンショック以来のゼロ金利復活とともに、QE4の拡充を決定。新たなQE4で米連銀は、今後数カ月間で最低でも米国債5000億ドルとMBS(住宅ローン債券)2000億ドルを買い取ることにより、資金供給残高を超ハイペースで膨張させていく方針を打ち出した(3月15日発表)。
しかし、週明け16日のNYダウ終値は前日比2997ドル安(12.9%安)と、またまた史上最大の下げ幅記録を更新。コロナショックには金融政策が通用しない。
米連銀のレポオペとQE4を合わせた資金供給残高は、昨年9月半ばの開始から6カ月間でなんと8700億ドルに膨らんだ。とくにコロナショックが始まった2月最終週からの膨張額が4800億ドル(3月17日時点:上図)。
過去のQE1からQE3をはるかに上回るペースのQE4が緩和効果を発揮できない原因は、けっして緩和額不足ではない。中央銀行がお金を刷って市場へバラまく緩和策自体が、今回の金融危機には不適切な手段だからだ。
<過去の米量的緩和の規模(2008−2014年)>
・QE1(08年11月−10年 6月): 総額1兆7250億ドル
・QE2(10年11月−11年 6月): 総額 6000億ドル
・QE3(12年 9月−14年10月): 総額1兆6300億ドル
前回の危機リーマンショックは怪しい金融商品(サブプライムローン債券)が引き起こした金融市場発に対し、今回は新型コロナウィルスの危険が人々の移動を阻み生産活動と消費を損なった実体経済発の危機。なので、リーマンショックには市場へのプリントマネーによる緩和策が有効だったが、コロナショックには実体経済を蝕むウィルスを取り除くしか危機克服への道はない。
▼新型肺炎の治療だけでなく予防にも適し、副作用の少ないアビガン
幸い3月18日の日本株市場は、コロナウィルス退治の最有力手段が富士フイルム富山化学(株)の抗ウィルス薬”アビガン錠”であることを世間に広めた。中国で治療効果を発揮したアビガンの有効成分”ファビピラビル”は、明白な副作用が観察されないことからも、中国政府が治療指針に正式採用予定。すでに現地のライセンス供与先(浙江海正薬業)は、その抗ウィルス薬の量産体制を整えた。
富士フイルムの国際社会貢献の朗報に、18日の同社株価は日経平均急落の逆風に負けずストップ高。日本でもアビガンが注目と期待を集めるようになった。
インフルエンザの治療薬として開発されたアビガンは、新型コロナウィルス肺炎だけでなく、エボラ出血熱の治療薬としても効果を発揮してきた。その有効成分ファビピラビルは、人間の細胞内でウィルスの遺伝子複製を阻止することにより、ウィルスの増殖を防ぐ仕組み。なので、妊婦以外への副作用はほとんどない。だからこそ、日本政府には2百万人分のアビガン錠の備蓄がある。
日本での新型コロナ患者へのアビガン投与は2月、横浜に停泊中の豪華客船ダイヤモンドプリンセス号からの救急搬送を担った現地の救急隊員が、防護服・ゴーグル・マスクを着用していたにもかかわらず、感染・発熱した悲劇(2月15日公表)がきっかけ。
患者たちへの治療薬および医療従事者への予防薬としてアビガンを認めるよう、神奈川県が日本政府に強く要望したのを踏まえ2月22日、新型コロナ用途でのアビガン投与が始まった。
「治療薬であるアビガン等について、必要な患者の方に丁寧に説明をし同意を得た上で、既に一部の医療機関で投与を開始しています。先般取りまとめた緊急対応策に基づき、取組を加速して下さい!」
安倍首相(Feb 23rd 2020)新型コロナ感染症対策本部会議
金融緩和が効かないコロナショック騒動が深刻化するなか、生産活動と消費を担う人々のウィルスを取り除き実体経済を再起させるためには、日本政府の緊急対応策に沿って予防・治療薬アビガンの投与を加速するのが一番いいだろう。米国産のエボラ薬”レムレジビル”とエイズ薬”カレトラ”の量産をいつまでも待ち続ける余裕はないはずだ。
まもなく欧州でも、抗ウィルス薬アビガンのニーズが急増するかもしれない。イギリスとドイツの首相は国民の60〜80%が新型コロナウィルスに感染することを前提に、国民の大半が免疫力を獲得することにより次回以降の疫病流行を乗り越える”集団免疫”の荒療治を試みる方針を表明済みだからだ。
「(新型コロナウィルス感染症について、)スウェーデンは軽症の人々の検査をやめる。イギリスとドイツは”集団免疫”を試みており、多くの人々を死の危険にさらすことになる」
Global Times胡編集長(Mar 15th 2020)Twitter
感染しても発病しないあるいは発病しても重症化せず、英独首脳の狙いどおり免疫力獲得できる人々が大半だろう。しかし、高齢者や持病のある者が荒療治に耐えられず死に至るのを防ぐためには、新型コロナウィルスを退治するアビガン錠などが大量に必要となるだろう。
ふと気がつけば、新型コロナ検査キットの普及と精度に大きな問題を抱えている日米なども、実は英独と同様に大量の抗ウィルス薬アビガンを要する”集団免疫国”なのかもしれない。
アナリスト工房 2020年3月19日(木)記事