終活のリスクを改善しよう(PB分野)
2014年2月10日(月)
「12世紀の中葉以降は高野山や比叡山などの霊場への遺骨納入の風習が本格化していく。(中略)聖人の膝元に眠ることによって、故人は彼岸の浄土への往生が約束されると信じられたのである。」
-佐藤弘夫 著『死者のゆくえ』岩田書院(2008)
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先日、筆者は京都の大きな寺へ一族の遺骨を納入(納骨)してきました。遺骨の大半は今も東京近郊の墓の中にありますが、仏壇に一部残っていたものを「聖人(宗派の開祖)」の眠る本山(宗派の中核の寺)へ納めました。いわゆる「本山納骨」です。
仕事の繁忙期でしたが、親戚から送られてきた遺骨を何日も手元に置いておくのは気が引けるので、急ぎ日帰りで納骨を決行しました。
PB(プライベート・バンキング)分野の話の前に、大半の宗派が実施している本山納骨(*)の内容について、筆者の体験を簡単に紹介しましょう。
一族の小さな骨壺を人数分カバンに詰め、早朝の新幹線と修学旅行でにぎわう京都市バスを乗り継いだ筆者は、10時前に本山(ある有名な寺)に到着。受付で納骨申込書を記入のうえ、故人1人当たり4万円の規定料金を納めました。
ほどなく自分の名前が呼ばれ、本堂で僧侶たちにお経を読んで頂いた後、聖人の眠る廟所へ移動。そこで再び読経・焼香のうえ、骨壺の中の遺骨を埋葬してもらいました。世話になった故人とのお別れに、心を込めて最後の合掌。
なお、本山納骨の受付から終了までは約1時間です。付近の円山公園で京懐石の昼食した後は、東山・祇園界隈をたっぷり散策。東京からの日帰りでも、余裕もって行動できます。
これからは毎年の彼岸に、いつまでも本山が読経しておいてくれます。しかも、年会費などの追加負担は一切かかりません(**)。このサービスが、PB分野のライフプランニングのために活用できるのです。
冠婚葬祭の「葬」の見直しとともにブームを呼んでいる「終活」は、ライフステージの最終段階に向けてのプランニング作業です。その際に描く資金計画の背景には葬の大きなリスクと多額の費用支出があり、これらの改善に本山納骨が役立つのです。
うち今回は、リスク改善の効果を説明します。葬にはどのようなリスクあり、それが本山納骨のサービスによっていかに改善されるのでしょうか?
葬で大切なことは、故人の冥福を祈り埋葬・供養することです。そのための儀式として、亡くなった当初の告別式や49日だけでなく、続いて1周忌、3回忌、・・・、最長で100回忌まで法要があります。しかし少子化のなか、このままでは法要を将来続けられなくなるリスクがあるのです。
1人の女性が一生に産む子供は平均1.4人(2012年)なので、次の世代の人口は現世代の7割(=1.4/2)。その次の世代は現世代の半分以下(=7割の2乗)に減り、やがて将来の法要の担い手がいなくなる危険が想定されます。
同時に、墓を受け継ぐ者がいなくなりその年間管理料の納付が途絶えると、墓もその中に埋葬されている遺骨も撤去されてしまうのです。
でも、遺骨の一部をあらかじめ本山納骨しておくことにより、これらのリスクは避けられるので、ご安心下さい。
なぜなら本山納骨は、墓のような個人あるいは家ごとの構築物を伴わない代わりに年間管理料がないため、その未納・延滞も本山の遺骨が掘り返される余地もありません。また、故人の法要の担い手が途絶えた場合でも、僧侶たちが毎年ずっとお経を読み続けてくれます。
よって、修学旅行の地へ再び足を遺骨とともに運ぶことで、故人の冥福を祈り埋葬・供養する葬の目的は将来にわたり遂行できるのです。本山納骨のサービスは、最後のライフプランニングとしての終活をやり遂げるための心強いヘッジ手段と言えましょう。
実は、本山納骨にはもっと大きな効果があります。そのヒントは、読経・焼香時に筆者の隣にいらした遺族の大きな骨壺が教えてくれたのです。
「終活の資金計画を見直そう(PB分野)」へ続く
株式会社アナリスト工房
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*)本山納骨は、天台宗の延暦寺、真言宗の金剛峰寺、浄土宗の知恩院、浄土真宗の東・西本願寺、日蓮宗の久遠寺、臨済宗の妙心寺、曹洞宗の永平寺などで行なわれています。
**)本山納骨にかかる費用負担額、サービス内容と所要時間は、行なう寺(本山)により様々です。上記はその一例です。