日本と中国の為替介入は時間差攻撃

米ドル売り・自国通貨買い介入に励む、日中のコラボレーションが効果発揮

2022年10月24日(月)アナリスト工房

バレーボールでは、ある選手が対戦相手へボールを打ち返すと見せかけて相手の選手たちが注意をそらしたすきに、別の選手がスパイクを打ち込む戦法を時間差攻撃という。

一方、先週の日本と中国の米ドル売り為替介入の「時間差攻撃」は、ある国も別の国も見せかけなしで、自国通貨を爆買いしドルを売り浴びせる強烈なスパイクをたっぷり打ち込むのが特徴。結果、日中の通貨当局は、低調な自国通貨を米ドルに対しひとまず大きく反発させるのに見事成功しました。


先週21日の中国元(上海市場のCNY)が1米ドルあたり一時7.2512元と2008年11月以来の元安水準に急落した後、中国の通貨当局(国有銀行)はドル売り元買い介入を実施し、1ドルあたりの元相場を一時7.2198まで元高方向へ0.4%と大きく是正(中国国有銀がドル売りのもよう、防衛線7.25元 終値08年以来の安値)。

為替水準が当局にきめ細かくコントロールされている中国元は、為替の値動きが西側の主要通貨よりもはるかに小さいことから、為替介入による是正率が0.4%程度でも際立って目立つ大幅是正。なので、介入効果はバッチリです!


10月21日の中国の為替介入が成功に終わってからわずか15分後の日本時間23時半、日本の通貨当局は、米ドル安に振れやすい絶妙なタイミングを逃さず、ドル売り円買いの為替介入に踏み切りました。介入直前に一時1ドルあたり151.94円と1990年7月以来の円安水準に暴落した円相場は、介入直後には一時146.23円まで円高方向へ3.9%と激しく反発。

今回の日本の為替介入は、9月22日の200億ドル規模の介入(一時145.90円と1998年8月以来の円安水準まで落ち込んでいた円相場を140.36円まで3.9%是正)と同様に、もちろん大成功です!

【日中勢のドル売り為替介入の実施時期】 2022年(時刻は日本時間)


・日本:9月22日、10月13日、18日、21日23時半、10月24日8時半

・中国:…、10月17日、21日22時半

実は、日本の米ドル売り介入は10月18日も実施されたが、先立つ中国の介入がその当日でなく前日だったことからドル安に振れやすい地合いがすでに失せていたため、日本の通貨当局は介入効果をほとんど発揮できなかったのが実情。中国の介入が観察されなかった13日の日本の介入も、同様に効果不十分の失敗。

10月中旬の2回連続失敗の教訓を踏まえ、21日の日本のドル売り介入は、あえて中国の介入直後のドル弱気ムードたっぷりの市場で、効果的に即実施された「時間差攻撃」と推察されます。

▼米国債保有高が1、2位の国々の米ドル売り介入の原資は実質無限

中国の加勢に元気づけられた日本のドル売り介入は、基軸通貨ドルにしがみつき続けたい市場参加者が多いなか、まだまだ終わりそうにない。


本日24日の日本時間の早朝、為替市場の円相場は一時1ドルあたり149.71円まで円安が再燃し、日本の通貨当局(財務省と日銀)は前日に続き介入を実施し145.56円まで円高方向へ是正したが、夕刻には149円台に押し戻されました。

中国元(上海市場のCNY)も再び売られ1ドルあたり7.2633元まで年初来安値を更新するなか、市場では日中のさらなる追加介入への観測が強い(日本時間22時時点)。


日中ともに追加介入の原資は、もちろん極めて豊富。日本の通貨当局が為替市場で売った外貨の米ドルは、主に外貨準備の米国債を売って得たドル資金を為替取引の相手へ支払うことにより、資金決済されます。介入原資の米国債は、保有高1位の日本が1兆1998億ドル、2位の中国が9718億ドル(8月末時点:米財務省公表)。その大半が各国の外貨準備。なので、為替を安定させるのに必要なドル売り介入の原資は、十分すぎるほどあることから、実質的には本当に無限なのです。


「(米ドル売り・自国通貨買い介入の原資は)無限にある」

神田財務官(Oct 20th 2022)記者会見


ならば、日中のドル売り介入の継続は力なり。まだまだ続く可能性が高い。

アナリスト工房 2022年10月24日(月)記事