米利上げ減速、QE4マネー回収加速
絶妙な利上げ幅0.5%、主策リバースレポを見事テコ入れ。回収率50.7%
2022年12月19日(月)アナリスト工房
アメリカの金融政策決定会合FOMCは先週14日、わずか0.5%にすぎない利上げを見事に決めた。前回までの4会合(6、7、9、11月のFOMC)の利上げ幅がいずれも0.75%。今回は、依然高水準のインフレ状態(11月の消費者物価指数CPIが前年同月に対し6.1%上昇)なのに、あえて利上げのペース減速に踏み切った。
結果、米連銀FRBは、QE4(量的緩和第4弾)で放出した総額4.95兆ドルのマネーの回収を、再び順調に進めるきっかけを上手くつかんだ。大方の市場予想どおり0.5%利上げが決定した14日、QE4マネーの回収率は50.7%。過去最高だった9月28日時点の50.3%を上回り、10月以降の回収難のスランプはひとまず克服された。
FRBのQE4マネーの回収手段は、過去のQEで買い取った金融商品を満期非継続あるいは中途売却により保有高を減らしてゆく量的引き締め(QT)だけではない。最強の回収手段は、FRBが米国債を担保にNY市場の金融機関勢から翌日物資金を借り入れるリバースレポ(RRP)。21年3月から連日実施中のリバースレポは、毎日欠かさず続いており残高急増が続いたことから、QE4マネー回収の主力策と化している。
債券の買い支えなどにより市場の余剰資金が不足気味だった22年10-11月のリバースレポ残高は、一時的に伸び悩んだ。しかし、12月14日に0.5%利上げが正式に決まる過程で、リバースレポは4連日伸長し勢いをひとまず取り戻した。
【FRBのリバースレポ(RRP)と量的引き締め(QT)による
米QE4マネー(総額4.95兆ドル)の回収率推移 2022年】
・12月14日時点:50.7%(RRP2.19兆ドル、QT0.32兆ドル)
・11月30日時点:49.3%(RRP2.12兆ドル、QT0.32兆ドル)
・10月26日時点:48.5%(RRP2.19兆ドル、QT0.21兆ドル)
・9月28日時点:50.3%(RRP2.37兆ドル、QT0.12兆ドル)
・8月31日時点:47.3%(RRP2.25兆ドル、QT0.09兆ドル)
・7月27日時点:45.1%(RRP2.19兆ドル、QT0.04兆ドル)
12月14日の利上げ決定に伴い、リバースレポの金利も政策金利と同様に0.5%引き上げが決まった。新たなリバースレポ金利の水準4.3%は、米国債の主な年限の利回り(2年物4.23%、5年物3.64%、10年物3.49%、30年物3.52%:米財務省公表データ)よりも高水準。
とくに、極端な逆イールドのもとで不自然に押し下げられた指標10年物の利回り(3.49%)を著しく上回るリバースレポは、確定利回り運用の市場参加者にとても魅力的な金利水準である。
遊び心たっぷりな米国債市場の力作『不自然極まりない逆イールド』は、アメリカ経済の長期低迷を強く示唆・警告していることから、低迷続きの株式市場のマネーを米債とリバースレポへ逃避するよう導く効果も発揮中。今回のFRB0.5%利上げは、主要2市場(米国債と株式)からQE4マネー回収を再び進めるために、ズバリ的確な上げ幅とみてとれる。
金融機関の余剰資金が超大量に生じる年末は、リバースレポの残高が急伸し過去最高を勢いよく更新する傾向が非常に強い。昨年12月は、QE4の追加テーパリング(さらなる規模縮小)を決めたFOMCから半月後の年末までにリバースレポ残高は、なんと2800億ドルも跳ね上がった(1.62兆ドル→1.90兆ドル)。
今年の12月は、月950億ドルのQT(量的引き締め)がFOMCまでまったく実施されていないことから、月後半のQT残高急増が見込まれる。年末にはリバースレポおよびQTによるQE4マネーの回収率が55%を勢いよく超える可能性が高い。とはいえ、空前の超大規模QEの後始末は、とんでもない奇策しか選択肢がないようだ。
アナリスト工房 2022年12月19日(月)記事