ウクライナ疑惑を晴らす元NY市長

疑惑の真相は、現地の利権で私腹を肥やしたオバマ前政権の汚職

2019年10月3日(木)アナリスト工房

謎が多く興味深かった歴史は、繰り返すのが早すぎたとき、あらかじめネタバレのドタバタ喜劇と化すかもしれません。

今年4月に"ロシア疑惑(2016年の米大統領選でトランプ陣営が、トランプ氏有利となるようロシアを選挙介入させた疑い)"が無事晴れたアメリカでは、早くも来年の大統領選に向けて再び旧ソ連領の国名の付いた”ウクライナ疑惑”がはじまりました。

先週浮上したウクライナ疑惑は、トランプ氏が大統領選で有利になるよう対抗馬として有力なバイデン前副大統領の汚職を捜査せよと、ウクライナ大統領へ選挙介入を軍事支援と引き換えに強く要求したとの疑い(実は濡れ衣)です。

前回のロシア疑惑の真相は、DNC(民主党全国委員会)のIT担当セス・リッチ氏が、DNC幹部の間で交わされた電子メールを機密文書公開サイト”ウィキリークス"を通じて公表したこと。それらのメールは、党内予備選で人気首位のサンダース上院議員でなく、2位以下にすぎないクリントン元国務長官を勝たせるよう働きかける内容だったのです。

なお、正義感の強いリッチ氏が16年7月に路上で強盗に射殺されたとき、不思議なことに彼の財布とクレジットカードが手付かず無事でした。

ロシア疑惑は民主党予備選の不正に関する内部告発であり、トランプ氏を有利に導いたのは不適任者を大統領候補と決めた民主党幹部たち。アメリカ人による正義の内部告発はロシアによる選挙介入にすり替えられ、大統領に当選したトランプ氏を攻撃するための疑惑が強引にでっち上げられたのです(ロシア疑惑が晴れたトランプの逆襲)。

一方、私腹を肥やしたバイデン前副大統領の汚職がウクライナによる選挙介入にすり替えられた事件が、今回のウクライナ疑惑です。

その真相をツイートのうえ米主要メディアで正義の告発を実行したのは、元NY市長でいまはトランプ氏の顧問弁護士を務めるジュリアーニ氏。これまでのジュリアーニ弁護士の調査によると、オバマ政権時の汚職はバイデン氏だけでなくケリー元国務長官の名前も挙がっています。とくにバイデン氏は、なんと中国に15億ドルで買収された容疑が濃厚です。

▼米ウクライナ首脳は、ともに前政権の過ちを糾すために意気投合

米民主党のペロシ下院議長は19年9月24日、米ウクライナ首脳電話会談(7月25日実施)で疑惑が生じたとの諜報機関CIA職員の内部告発を口実に、トランプ大統領への弾劾調査を開始すると発表。しかし、翌9月25日に米司法省が公表した米ウ首脳会談の記録には、大統領の疑惑に該当する発言が見当たりません。

会談の前半では、汚職にまみれたポロシェンコ前政権とは一線を画すウクライナのゼレンスキー大統領が、トランプ氏が唱える「ドレイン・ザ・スワンプ(汚職などにより腐敗した沼地を浄化しよう)」の運動に感化され、ウクライナ再建に取り組んでいることを表明。米ウともに取り組んでいるこのドレイン・ザ・スワンプが、会談の中心テーマです。

また、多くの国々に対するトランプ外交の口ぐせ「互恵的である必要」に対し、ゼレンスキー氏は「国土防衛のために、アメリカからジャベリン(対戦車ミサイル)を追加購入する準備がすでにほぼ完了した」と回答。

アメリカからの軍事支援と解釈可能なミサイルは、けっしてウクライナの米大統領選への選挙介入とは引き換えではなく、他の西側諸国の場合と同様に互恵貿易への一環と解釈できます。

会談の半ば以降は、中心テーマのドレイン・ザ・スワンプの続き。アメリカのオバマ前政権は、2014年に親ロのウクライナ政府を倒し親米のポロシェンコ前政権を擁立させた後、なんと侵略した現地の富を奪いながら利権をたっぷり貪ってきたのです。

そんなとんでもない実態を把握するために、バー米司法長官と現ウクライナ政権とのコンタクトを依頼したトランプ氏へのゼレンスキー氏からの回答は、「側近が最近ジュリアーニさんと話をしており、われわれは彼のウクライナ訪問と会合をとても待ち望んでいる。(中略)ウクライナ大統領として、捜査が公にかつ正直に行われることを保証する」。

汚職捜査の対象が次期大統領選でトランプ氏の対抗馬として有力なバイデン氏だけでなくオバマ前政権の複数の主要メンバーであることから、捜査目的はトランプ氏の選挙対策でなく前政権の過ちを糾すことと解釈できます。

また、ジュリアーニ氏が米ウ首脳電話会談に先立ちゼレンスキー大統領の側近(金融に詳しいヤーマック弁護士など)と親密に話を進めたことからも、ウクライナ疑惑(トランプ氏が大統領選を有利に戦うために、会談でウクラウナ大統領に対し選挙介入を強く要求した疑い)は成立しない

そもそも、民主党内討論会で討論相手の名前や自分自身のわずか2分前の発言を忘れる珍事が続出中のバイデン前副大統領は、次期大統領になれる可能性がほとんどないのが実情。そんなバイデン氏がトランプ氏の大統領選対策の対象とは、どうしても考えづらいですね。

▼先駆けしたジュリアーニ氏の機転が、疑惑の矛先を前米政権へ

ウクライナ政府の親身な協力を得て、オバマ前政権の汚職資金の流れを解明したジュリアーニ弁護士は19年9月25日、調査結果の概略をツイッターで公開することからはじめました。

まずジュリアーニ氏は、オバマ前政権の傀儡ポロシェンコ前政権がバイデン前副大統領とその息子へ数百万ドル以上をマネーロンダリング(資金洗浄)して支払った事実を紹介のうえ、帳簿公開すべき汚職容疑者はバイデンの息子だけでなくケリー元国務長官の義理の息子も含まれることを指摘しました(下記)。

「われわれは、汚職にまみれたウクライナの支配者が3百万ドルをバイデン(前副大統領)の家族へ、さらに3〜4百万ドルをバイデン本人へマネーローンダリング(資金洗浄)して支払ったことを知っている。バイデン、ケリー(元国務長官)の義理の息子、悪名高いギャングの首領ホワイティ・バルジャーの甥に関するすべての帳簿を公開せよ」

「バイデンは、2013年12月にハンター(バイデンの息子)をエアフォース2(副大統領専用機)に乗せ中国へ飛ばし、ハンターの会社を計15億ドルで売り付けた記録を公開することに同意すべきだ。中国が交渉合意のために副大統領へその資金を支払った疑いがある」

ジュリアーニ元NY市長(トランプ大統領の顧問弁護士)

Twitter(Sep 25th 2019)

またジュリアーニ氏は、バイデンの息子ハンターとケリーの義理の息子のウクライナにあるガス会社が15億ドルで中国の国営企業に売り付けられた事実をツイートした直後、主要メディアのなかで保守系のFOXのニュース番組に出演。

結果、マネーローンダリングされた汚職資金の流れ(ウクライナからラトビアとキプロスを経てバイデンの息子へ)ととともに、前米副大統領が中国に買収されたとみてとれる事実が、世間に広く伝わったのです。その事実は、いまの米中貿易交渉が難航している原因の1つかもしれません(下記)。

「バイデンの息子へ3百万ドル支払われたときのマネーロンダリングの証拠となる記録は、私がその日付記録とともに入手済みだ。その資金は、ウクライナからラトビアとキプロスを経て彼に渡った。またバイデンの息子は、中国から15億ドルを受け取った。(中略)米副大統領は中国に買収されたのだ!」

ジュリアーニ元NY市長(Sep 25th 2019)FOXのインタビュー

なおバイデン前副大統領は、息子たちの会社への汚職捜査に積極的なウクライナの検事総長をウクライナ支援継続と引き換えに解任させた"自慢話"を、18年1月開催のCFR(外交問題評議会)で披露。バイデンは自ら墓穴を掘ったのです。

ウクライナに関する疑惑の本当の持ち主はバイデン 。ウクライナ疑惑とは、バイデンをはじめオバマ前政権の疑惑をトランプ大統領へ付け替えようとするとんでもない陰謀工作といえましょう。

下院の民主党議員たちがトランプ大統領を弾劾しようと調査をはじめた直後にジュリアーニ弁護士が疑惑の真相を公にしたため、大統領への陰謀工作は即バレ失敗とみてとれます。そもそも、大統領弾劾には与党共和党が過半数を占める上院で3分の2以上の賛成が必要なので、弾劾成立に至る可能性はゼロに近い。

トランプ氏に濡れ衣を着せようとした工作員たちは、バイデンの墓穴への道連れとなるかもしれません。

アナリスト工房 2019年10月3日(木)記事